コンテンツへスキップ

ペット豆知識No.21-あまりにも痛~ィ過ぎる前腕骨の骨折-

 「立てば芍薬、坐れば牡丹、歩く姿は百合の花」とは○○の喩えです。「カモシカのような脚」とは言わずもがな、美脚の代名詞です。犬の場合にはこの美脚が「仇」(あだ)となるのですが、イタリアン・グレー・ハウンドやトイ・プードル、パピヨン、チワワ、ポメラニアンなどの細くて長~い美脚の持ち主が実に簡単に骨折を起こすのです。病院の診察台の高さは1メートルあるかないかですが、たとえばパピヨンをこの高さから落とせば、2、3頭に1頭は前腕骨を骨折するものと思ってもらって結構です。 

 前腕骨とは手首と肘の間の長骨でトウ骨と尺骨の2本から成っています。解剖学的にはヒトと同じです。図を参照して下さい。

 症例はプードル、ポメラニアン、チワワを示していますが、骨折の原因は椅子から飛び降りたとか、子供が抱いていて飛び降りたとか、シャンプー中に台から落下したとか、他の犬とじゃれていた・・・・・など様々です。骨太のM.ダックスやシーズー、コーギーでは、このような前肢の骨折は、交通事故では見られますが、通常起こりません。

 そこで、このような見るからに「華奢(キャシャ)」な犬種を飼っている方は、前肢は本当に簡単に骨折するものだということを常に脳裏に刻んでおく必要があります。もちろんソファーや椅子、ベッド、いわんや食卓テーブルなどの高いところに乗る癖をつけさせないことです。ここでも小さい時からの”しつけ”が重要ということになります。

 治療は、亀裂骨折(いわゆる罅=ヒビ=細かい割れ目)や骨折端のズレが極めて小さい場合を除いて、迷うことなく手術による「プレート固定」です。骨折端が動くこと、特に回転することが治癒を妨げます。ピン(髄内ピン)による手術法はこの回転が避けられません。

 術後は2~3週間の外固定〔Gips(ドイツ)=ギブス包帯〕とケージ・レスト(Cage rest=ケージの中で絶対安静)が必要とされます。抜糸は10~14日で、ギブス交換時に行います。レントゲン撮影は仮骨形成が見られるようになる2~3週間目と、術後2ヶ月前後に行い、経過が良好であることを確認します。完全な治癒期間は年齢により大きく差があります。骨の成長期にあるものは数週間、高齢になるに伴い2~3ヶ月を要します。手術に使用したプレート(Plate)やスクリュー(Screw=螺子)(いずれもステンレス製)は、プレートが折れたり、スクリューが緩むようなことがない限りは、一生涯そのまま体内に埋め込まれた状態で問題ありません。15~20年前までは発ガン性の観点からプレートを除去していましたが、ヒトに比べて寿命(Lifespan)が短いことから、現在ではその必要性はないと結論付けられています。

 「綺麗な手術」が為されれば、術後には正常に健常犬と何ら変わることなく生活できますので、ご安心下さい。・・・と言いたいところですが、健常な分、片方の前肢を骨折することも珍しい話ではありません。「人間万事塞翁が馬」如き事態かも知れません。くれぐれも御留意下さい。

先頭へ

電話受付