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ペット豆知識No.40-犬猫の歩行(歩様)異常・その①「犬の膝蓋骨脱臼」-MRT「ペット・ラジオ診察室」10月1日放送分

 今回からは「犬の歩行異常」について、シリーズで述べる。まず1回目は、小型犬で非常に発生頻度の高い「犬の膝蓋骨脱臼」である。

<犬の膝蓋骨脱臼>

・膝蓋骨とは、簡単に言うと膝の関節の前にある骨(膝の皿)のことで、正常では大腿骨の滑車溝に位置している膝蓋骨が内側もしくは外側の滑車を越えて脱臼する疾患のことを言う。原因には遺伝的素因の関与が示唆されている。

・膝蓋骨が内側に脱臼することを内方脱臼、外側に脱臼することを外方脱臼という。両者ともにどの犬種でも起こり得るが、内方脱臼は小型犬に多く、小型犬の跛行の最も一般的な原因の一つである。一方、外方脱臼は大型犬に見られる。猫では、交通事故などの骨折等に起因する以外、通常ない。

・来院時の主な症状は、時々見られる後肢のびっこ(跛行)である。脱臼が整復されれば、跛行はすぐさま消失し、患犬は「それまで何も無かったように」歩く。人が整復しなくとも、通常は犬が自分で治すことの方が多い。これは患肢の伸展で脱臼が整復されることを、犬が自ら「学習」することによる。

・本疾患の治療法は、保存療法と外科療法(手術)がある。大切なのは「手術をすべきか、あるいは手術を行わず様子を見るべきなのか」の判断である。膝蓋骨脱臼の進行度を表すグレードや年齢、獣医師の考え方の相違など、その判断にはいくつかの要因が関与しており、一律には決められないのが現状である。確実なインフォームド・コンセントを行い、場合によってはセカンド・オピニオンが不可欠である。特に、幼・若齢犬の重症例では骨(大腿骨・下腿骨)と膝関節の変形(内方脱臼でのO脚・外方脱臼でのX脚)が急激に進行するため、早い時期での手術の「決行」を余儀なくされる。また、成犬においても習慣性脱臼により、滑車や膝蓋骨に仮骨や潰瘍が形成され、疼痛を常に訴えるケースがある。この時にも手術が必要となる。

・現在、手術を必要としない症例が多いのは確かである。上記以外の例では、すぐに手術を選択せず、運動制限(ケージレスト)やサプリメントなどでの保存療法で様子を見るのが賢明であろう。

・本疾患は遺伝以外に生活習慣などの環境要因も重要である。高所の昇降や過激な運動、肥満などはその進行を助長するため、十分に留意することが肝要である。

 膝蓋骨脱臼については以前にも詳しく述べているため、詳しくはここで

文責 獣医師 棚多 瞳

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