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ペット豆知識No.41-救急疾患その2「交通事故」-MRT「ペット・ラジオ診察室」10月8日放送分

 前回の9月24日は犬の胃拡張-捻転症候群について述べた。それから1週間も経たずして13歳のアイリッシュセッターの同症が「夜間救急」に来院している。GDVには種々のリスクファクターがあり、高齢もその一つとして挙げられる。今後も犬の高齢化は着実に進むものと考えられ、同症に対するより一層の配慮が必要となるであろう。
 「救急疾患」の第2弾は「交通事故」をテーマに選んだ。

●夜間救急病院である「宮崎犬猫総合病院」が開院して2年3カ月が経過したが、2007年5月~2009年9月の間、交通事故で来院した犬猫は共に28例の計56頭であった。この数字は初診のみであるが、2週間に1例の頻度である。
●地域別の内訳は、犬の場合、宮崎市内が28頭中21頭で、市外では都城が4頭、川南、新富、綾町がそれぞれ1頭であった。猫では市内が28頭中23頭で、市外では3頭が清武町、国富町、都城市がそれぞれ1頭であった。
●夜間病院に来院時に心停止状態(DOA=dead on arrival)であった症例は犬が28頭中2頭で、猫が28頭中6頭であった。
●死亡例(DOAを含む)は犬で28頭中5頭(うち1頭は安楽死)、猫で28頭中9頭であった。
●犬での損傷部位(1個体で複数の損傷もされぞれ1つに数える)は、骨折(骨盤、脊椎骨折を含む)が28頭中11例、肺挫傷・気胸・横隔膜ヘルニアが28頭中4例、無症状が28頭中6例であった。
●猫での損傷部位は骨折が28頭中12例、気胸・横隔膜ヘルニアが28頭中4例であった。犬では確認できなかった膀胱破裂が4例、尿道断裂が1例見られた。
●飼い主不明の負傷動物が運び込まれた例は、犬で28頭中2頭、猫で28頭中10頭であった。

◎病気や疾患を疫学的や統計学的に整理することは、重要であるにも関わらず、軽視されがちである。これは大学などの研究業績としてポイントが上がらないことによるところが大きい。
◎現在の犬、猫の死因は悪性腫瘍や心臓病、腎臓病などが上位を占めるようになったが、以前は交通事故も多かった。
◎1974年と1980年にアメリカで実施された大規模な調査・研究によれば、来院数の実に13%が交通事故であり、その36%が死亡したとの報告がある。
◎最近(2009年、Streeterらの報告)では、2001年1月~12月の1年間にアメリカ・タフツ大学(Tufts大学はマサチューセッツ州にある私立大学)に交通事故で来院した239頭の犬についての研究報告が有る。239頭中、雄が126頭(去勢が75頭、未去勢が51頭)、雌が113頭(避妊済が86頭、未避妊が27頭)であった。年齢は若齢が149頭、中年齢が68頭、高齢犬が22頭であった。
◎以下この文献(JAVMA, Vol.235:405-408, No.4, August 15, 2009)によれば、239頭中169頭の71%が単独ではなく複数箇所に損傷が認められた。
◎損傷部位は多いものから、①長骨骨折、②肺挫傷(これらは70~80例)、③骨盤骨折(約50例)、④血腹=腹腔内出血(約40例)、⑤軟部組織損傷、⑥不整脈、⑦頭部外傷、⑧脊椎骨折、⑨眼球損傷、⑩上腕神経叢断裂、⑪腹壁ヘルニア、⑫尿路損傷(数例)であった。
◎239頭中で206頭(86%)が退院可能であった。26頭は短時間で死亡し、うち11頭は安楽死であった。7頭はその後交通事故が原因で死亡した。
◎入院日数は1~28日でその中央値は3日であった。費用は$77~$10,636で、中央値は$853であった。

※最後に
 飼い主でない人が、「通りすがり」に交通事故で倒れている瀕死の犬猫に出会して、動物病院へ直行する。その「心美しさ」に感動する次第です。一獣医師として敬意を表します。

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