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ペット豆知識No.54-救急疾患8・緑内障-MRT「ペット・ラジオ診察室」2010年1月7日放送分

<緑内障とは>
 いろいろな原因により、毛様体で産生された(眼)房水の眼外への流出が阻害され、眼内圧が上昇することで、一時的、あるいは永久的な視神経障害による視機能障害を特徴とする眼疾患である。

<犬猫の緑内障の特徴>
 犬猫の緑内障は、そのほとんどが流出経路の閉塞もしくは狭窄によって起こる。緑内障は早期の発見と適切な治療が必須である。そうでなければ、回復不可能な失明や痛みを伴ったいわゆる「見た目の悪い眼」になる

<そもそも(眼)房水とは?>
 ぶどう膜のひとつである毛様体で産生された眼房水は、水晶体から瞳孔を抜け、角膜と虹彩の根部=隅角櫛状靱帯を通過後、さらにその奥の線維柱帯網の網目状組織を通過することで濾過され、その後房水静脈叢を経て強膜静脈叢に入って全身循環へと除去される。割合は少ないが、犬で10~15%、猫で3%が虹彩や毛様体、脈絡膜、強膜から吸収・流出する。生理的役割は虹彩や角膜などの組織への水分と栄養補給である

<緑内障の分類>
 緑内障は4つに大別される。原因が不明の原発性ある疾患の2次病変としての続発性、原因の如何にかかわりなく隅角が開放性であるか、閉塞性であるかの4つである。
原発開放隅角緑内:隅角の幅に異常がなく、前眼房の深さも正常な病態である。ノルウェジアン・エルクハウンドおよびビーグルに見られる。発症の初期から中期において線維柱帯網は正常に発達しており隅角は開放しているが、緑内障が進行してくると隅角は徐々に狭くなり、最終的に閉塞する。原因は不明であるが、ある種のグルコサミノグリカンが線維柱帯網に蓄積し、房水流出抵抗が増大され、眼圧上昇を呈することが示唆されている。
原発閉塞隅角緑内:発生時の段階で、主として櫛状靱帯が発育不全または異形成によって、隅角が狭いか完全閉塞の状態にあるものをいい、先天性もしくは遺伝性要因が強く示唆されている。好発犬種として、ミニチュア・ダックスミニチュア・プードルシーズー柴犬アメリカン・コッカー・スパニエルシベリアン・ハスキーバセット・ハウンドイングリッシュおよびウェルシュ・スプリンガー・スパニエルなどが挙げれる。
続発開放隅角緑内障:隅角は開放しているものの、何らかの原因により櫛状靱帯や線維柱帯網などの房水流出路に閉塞(目詰まり)が起こり、房水の流出が妨げられ眼圧の上昇を招く。1次的な原因疾患は、ぶどう膜炎、水晶体前方脱臼、水晶体破裂、眼内出血、硝子体脱臼、新生物(腫瘍)などがある。
続発閉塞隅角緑内障:後眼房から前眼房への連絡路である瞳孔における房水の流出障害(瞳孔ブロック)による後房圧の上昇や、水晶体や虹彩を後方から押し出すような因子が原因となり、隅角が狭窄するか閉塞することで、房水の流出障害を惹起し、眼圧が上昇する。原因としては、ぶどう膜炎、水晶体亜脱臼、水晶体膨化、硝子体脱出、新生物などの疾患が挙げられる。

<原発性と続発性は、どちらが多い?>
 「Pet Clinic アニホス(東京都動物病院)」の「半導体レーザーによる経強膜毛様体光凝固術を行った犬の緑内障15例」(水野雅夫ら、2004年)の抄録を紹介する。
1998年から現在までに緑内障と診断された犬35症例(45眼)のうち、犬種で分類するとシーズー9例、柴6例、雑種5例、アメリカン・コッカー・スパニエル2例、ゴールデン・レトリバー2例、ミニチュア・ダックス2例、他9例であった。年齢は2~15歳(平均約9歳)で雄13例、雌22例であった。原因で分けると原発性緑内障が26例34眼(初診時眼圧:平均47.12mmHg)、続発性緑内障が9例11眼(初診時眼圧:平均47.73mmHg)で、その原因は眼内炎2例、外傷後2例、水晶体脱臼2例、網膜剥離2例、角膜潰瘍1例であった。内科的治療のみ行われたのは16例19眼(初診時眼圧:平均40.65mmHg)で、点眼薬のみが7例、点眼と内服薬の併用が9例であった。外科治療が行われたのは19例26眼(初診時眼圧:平均52.62mmHg)でレーザー手術15例、ゲンタマイシン眼内注入3例、水晶体摘出1例であった。視覚予後は35例中31例が最終的に失明した。
原発性と続発性緑内障の比率は26:9であり、約3:1の割合原発性緑内障が多い
好発犬種の存在が示された。
●最終的に、かなりの症例で視覚が消失し、失明に至った。
●「レーザー」治療の成績については後述。

<緑内障の症状>
急性緑内障の症状:
 ・赤目(結膜充血、上強膜充血)
 ・羞明、流涙、瞬膜突出、眼瞼痙攣
 ・散瞳(虹彩不動)
 ・広汎性角膜浮腫
 ・眼圧上昇(30mmHg以上)
 ・元気消失、食欲不振
 ・眼をこする、眼を細くする
 ・疼痛
慢性緑内障の症状: 
 ・牛眼
 ・疼痛兆候の減少
 ・上強膜の血管怒張
 ・角膜の線状痕
 ・虹彩の変性
 ・水晶体脱臼
 ・乳頭陥凹を伴う視神経委縮
 ・網膜委縮

<緑内障の診断>
 赤目瞬膜突出(白眼を剥き出す感じ=眼圧上昇)疼痛散瞳などの臨床症状から、ある程度の仮診断は可能である。しかし、眼圧が正常よりも真に高いかどうかは、眼圧計を使用しない限り、不確実である眼球の視診や触診のみで眼圧を推定することは極めて危険である。逆に、一目で眼球の突出があれば、緑内障が慢性化に向かっており、いわゆる「牛眼」状態を呈していると考えられる。確定診断と治療方針の決定には眼圧測定が必須である。
診断上のポイント: 
 ・初期の緑内障は全身疾患と誤診することがある。
 ・眼の痛みは診断の重要なポイントとなる。
 ・初期の緑内障は眼圧測定しなければ診断できない
 ・初期緑内障の診断率が低いのは、眼圧計が普及していないのが大きな理由の一つである
 ・犬猫の正常眼圧は15~25mmHgの範囲である。
 ・30mmHg以上は緑内障が示唆される。

<緑内障の治療>
 治療方針は、「視力が望める眼」か、残念ながら「視力が望めない眼」かによって異なる
少しでも「視力が望める眼」の可能性があれば、内科的あるいは外科的療法を総動員して駆使し、全力を尽くす
「視力が望めない眼」は、「疼痛」を取り除くこと、生涯に渡っての継続治療に終止符を打つための処置を考慮する
急性緑内障治療の第一義は、上昇した眼圧を早急に低下させ、視力の消失を防ぐことを目的とする。マンニトールの静脈内投与や炭酸脱水酵素阻害剤・プロスタノイド・β-遮断薬などの点眼を行う。
慢性緑内障の治療には、ゲンタマイシンの硝子体内注入やシリコン義眼挿入法、眼球摘出術などがある
●レーザー治療を実施している施設は限られているが、前出の水野らによれば、15例中21眼でレーザー手術を実施。年齢は2~14歳。全症例で患眼の威嚇反射は喪失。初診時眼圧は28~81mmHg(平均51.90mmHg)で手術回数が1回の症例は9例13眼で、術後眼圧は4~56mmHg(平均11.27mmHg)であった。77%の症例で正常眼圧まで下降した。原発性緑内障の10例14眼のうち、成功9例10眼、再度のレーザー(4ヶ月以内)3例4眼、再発2例2眼であった
●レーザー治療の合併症は眼内出血から眼球委縮2例2眼、角膜潰瘍2例、白内障2例であった。(同抄録から)
●続発性緑内障の5例6眼のうち、成功1例1眼で、合併症は眼内出血3例4眼、眼球委縮1例1眼であった。(同抄録から)
●この報告で言えることは、原発性緑内障での「レーザー」治療の有効性が強く示唆されている。
原発性緑内障は、来院した初診の時点で既に「失明」の状態にある症例が多い
●視覚を失った状態であれ、「疼痛の緩和・除去」の観点から、レーザー治療の有用性が示されている。

<まとめ>
●「眼疾患」は「救急疾患」である。
好発犬種を飼育している場合は、「ちょっとの赤目」(軽度の結膜炎)でも、直ぐに病院へ行って、「眼圧測定」を行うべし
ぶどう膜炎などから続発する緑内障では、原因疾患を完治するまで徹底的に治療する

<参考>
・『眼が赤い』動物が来院したら-検査、診断、治療のABC-シェリング・プラウ アニマルヘルス株式会社(2007年)
・太田充治(2002):緑内障の発症機序、SURGEON 32・特集 緑内障pp6~11、(株)メディカルサイエンス社

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