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ペット豆知識No.68-「トイ・プードルによく見られる疾患・その1」-MRTラジオ「ペット・ラジオ診察室」4月15日放送分

 犬種別・多い疾患シリーズ②の今回は、「トイ・プードル」に多い疾患について述べる。

1.膝蓋骨脱臼
 ①膝蓋骨とは、簡単に言うと膝の関節の前にある骨(膝の皿)のことで、正常では大腿骨の滑車溝に位置している膝蓋骨が内側もしくは外側の滑車を越えて脱臼する疾患のことを言う。トイ・プードル(小型犬)では内側脱臼が多い。

 ②重症度により1~4までグレードがあり、
(グレード1)膝蓋骨は手で押すと脱臼するが、手を離せば正常位に戻る。
 (グレード2)膝蓋骨は膝を屈曲するか手で押せば脱臼し、膝を伸展するか手で押せば整復する。
 (グレード3)膝蓋骨は常に脱臼したままで、手で押せば整復が可能で、手を離せば容易に再脱臼する。
 (グレード4)膝蓋骨は常に脱臼したままで、手で押しても整復できないもの
を言う。

 ③症状は、後肢の跛行を特徴とする。グレード1、2では、膝蓋骨が滑車溝に戻ると痛みが無くなるため、跛行は消失し、再び脱臼した時に跛行が認められる。常に跛行が認められるとは限らないのだ。また、常に脱臼しているグレード3、4では痛みを認めないことも多い。

 ④膝蓋骨脱臼は遺伝性が示唆されており、(1)大腿四頭筋の配列異常、(2)大腿骨骨頭の異常、(3)滑車溝(膝蓋骨が正常に納まっている場所)が浅い、(4)大腿骨・脛骨の変形・・・といった原因がある。

 ⑤治療法として大切なのは、「手術をすべきか、しないべきか」である。特に幼・若齢犬では注意が必要で、重症例では骨(大腿骨・下腿骨)と膝関節の変形(内方脱臼でのO脚・外方脱臼でのX脚)が急激に進行するため、早い時期での手術が必要となる。また、成犬においても習慣性脱臼により、滑車や膝蓋骨に仮骨や潰瘍が形成され、疼痛を常に訴えるケースがある。この時にも手術が必要となる。

2.大腿骨頭壊死
 ①大腿骨頭に非炎症性無菌性壊死を生じる疾患である。
 
 ②症状としては、患肢の跛行が認められ、2~3ヶ月で徐々に跛行が進行していく傾向がある。片側の場合が多いが、12~20%では両側に認められる。

 ③一般的に、4~10ヶ月で発症する。

 ④大腿骨頭への血液供給が断たれることにより、細胞の壊死を招くが、血液供給が断たれる原因としてはいくつかの説ある。具体的には、ホルモンの影響、解剖学的構造、関節内圧、大腿骨頭の梗塞などがあげられる。
 また、この疾患は遺伝性(常染色体劣勢遺伝)が示唆されている。
 
 ⑤壊死部では骨が脆くなっているため、体重が負荷されることにより大腿骨頭や骨頸の崩壊や変形を招く。また、二次的変化として、骨関節症(関節の形態が変化する)や寛骨臼の骨きょく形成を認める。

 ⑥治療は基本的には外科的に大腿骨頭切除術を行う。(保存療法では完全にコントロールできないことも多い。)ちなみに、犬は前肢に体重の7割、後肢に体重の3割を負重しているため、小型犬で大腿骨頭切除を行っても歩行可能である。
 筋萎縮の程度が回復に影響を及ぼすが、予後は良好である。

3.骨折
 トイ・プードルは簡単に骨折する犬種である。台から落ちる、抱っこしていて落ちる、階段から落ちる…など、注意に注意を重ねても骨折してしまうことが多い。明るくおてんばな性格と、細い肢が災いしている。

4.気管虚脱
 ①気管の軟骨はその背側では欠けており、欠如部では平滑筋束をもつ膜性壁があり軟骨の両端を連ねる。
 気管虚脱とは、気管の軟骨輪の扁平化や背側気管膜(膜性壁)の伸張により管腔が狭くなる疾患である。
 
 ②罹患動物では、気管での細胞数の減少や基質の変化が認められ、糖タンパクとグリコサミノグリカン(組織構造の維持や保護を行う)が減少・欠如している。これにより、気管・気管支の軟化を生じる。軟骨形成不全や硝子軟骨の変性が関与している場合もある。
 気管の軟化により背側気管膜が伸展し、虚脱を生じる

 ③後天性の場合が多く、気管輪のサイズは正常だが、輪の形を保てなくなり虚脱する。中年~老齢で多く見られる。

 ④症状としては、「goose houk」(ガチョウの鳴き声)が特徴的である。慢性で耳ざわりな乾いた咳をする。重度になると発熱、失神、呼吸困難、呼吸不全に陥る
 興奮、不安、気管の圧迫、水を飲む、フードを食べる…などにより咳が誘発される。ホテル・術後といった極度の興奮や不安を生じる場合には注意が必要である。

 ⑤慢性の咳によって向かい合う気道内上皮は接触・刺激され、上皮に炎症を起こす。それにより咳が誘発される、という悪循環に陥る。

 ⑥治療は、鎮咳剤、ステロイド、気管支拡張剤、抗生剤などの投与といった内科療法が主である。ステロイドの投与により、刺激・炎症による気管の浮腫が軽減する。
 また、さらに大切なことは日頃の管理である。その注意点を以下に述べる。
    ハーネス(胴輪)にする。
    ②興奮させない。吠えさせない。
    ③涼しくする
    ④太らせない。

 これらの事に注意し、症状の悪化を食い止めよう。

  

文責:獣医師 棚多 瞳

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