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ペット豆知識No.78-高コレステロール血症と疾患の関係について-MRT「ペット・ラジオ診察室」6月24日放送分

 LDLコレステロールを測りましょう!などとコマーシャルが流れるほど、人ではコレステロールに関心が高まっているが、犬でも気にすべきなのだろうか?今回は「甲状腺機能低下症などの疾患とコレステロールの関係」について述べる。

 ●まず、コレステロールの高い犬は多いのだろうか?
 当病院では、犬の高齢化に伴い、高齢になったわんちゃんの健康診断を実施しているのだが、結論から言うと「犬の高コレステロール血症はめずらしくない」。ただし、人ではHDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)に比べ、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が多いが、犬ではその逆である。犬ではHDLコレステロールとLDLコレステロールの比がおよそ10:1でHDLコレステロールが圧倒的に多い。そのため、人に比べ、多少の高コレステロール血症は大目にみれるわけである。

 ●それでは、そのバランス崩れることはないのか?
 肥満や甲状腺機能低下症、クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)、糖尿病などの疾患により、犬や猫でもLDLコレステロールの割合が増加し、HDLコレステロールより多くなる場合がある。高度の高コレステロール血症が認められる場合には、HDLコレステロール、LDLコレステロールを計測することも大切である。また、犬の高コレステロール血症には、上記のようなさまざまな疾患が関与している可能性があるため、臨床症状と合わせ、それらの疾患が疑われる場合にはその疾患の治療を開始しよう。

 ●その中でも甲状腺機能低下症とはどのような病気なのか?
 〇甲状腺機能低下症の場合には、甲状腺から分泌されるホルモンが足りない。甲状腺ホルモンは様々な作用を持ち、代謝量増加、心収縮力増加、心拍数増加、正常な神経や骨格の成長や発育を促す、血中コレステロールの低下などがあげられる。

 〇この甲状腺ホルモン濃度が低下することで体重増加、運動したがらない、毛質や毛の量の変化、生殖異常、神経異常、徐脈、神経症状など、多様な症状が現れる。
 
 〇原因のほとんどは、甲状腺炎(免疫介在性と考えられている)、あるいは特発性甲状腺萎縮である。

 〇診断は臨床症状や血液検査(高コレステロール血症、高トリグリセリド血症など)の結果からこの疾患を疑うが、最終的には血中甲状腺ホルモン濃度(T4)を測定することで行う。

 〇治療は甲状腺ホルモン製剤の投与である。これにより、体重減少、毛量の増加、皮膚症状の改善、活動的になる、など目に見える変化も多い。適切な投薬を行えば長生きできることが多い疾患である。

 ★近年、犬でも動脈硬化や脳梗塞が生じることが分かってきた。犬は人と異なり、全身麻酔下でのCT、MRI検査となるため、容易に診断することはできないが、当病院でも脳梗塞や心筋梗塞を疑わざるを得ない症例がいくつかあるのは事実である。高コレステロール血症の影には、いくつかの疾患の可能性があることをお忘れなく。

 

文責:獣医師 棚多 瞳 
 

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