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MRT「ペット・ラジオ診察室」-乳癌の転移-9月9日放送分

今回のテーマは「犬・猫の乳腺癌の転移」である。

 ここ最近、乳腺癌の肺転移が認められる症例が増加している。以前にも何度か述べているが、再度、乳腺腫瘍について注意を促したい。
 もともと乳腺腫瘍があり、①かなり大きくなるまで放置していたケース②手術をしたが組織検査で悪性度が高かったケースや、③高齢や心臓病などの持病があることで手術を躊躇っていたケースで、乳癌の肺転移が認められる症例が増加している
 このような例では、①最近咳をするようになった②食欲低下して痩せてきた③散歩をしたがらない④よく寝ている、といった症状で来院する。
 肺転移確認後の生存期間はさまざまだが、レントゲン撮影で転移所見を確認後、3ヶ月~6ヶ月のケースが多い。ただし、咳や呼吸困難といった症状が認められるケースでは、1週間以内に亡くなる場合もある。苦しむことも多いため、安楽死を望む場合も少なくない。

 以前にも述べたように、犬の乳腺腫瘍の約半数は良性、残り半数が悪性となっており、さらに悪性のうち約半数が転移すると言われている。一方、犬に比べ猫では悪性度が高く、少なくとも85%が悪性であり、その80%以上で死亡時に他の臓器への転移が見られる

 ここで大切なのが、乳腺腫瘍の予後腫瘍の大きさには深い関わりがある、ということである。乳腺腫瘍の場所や数は予後に影響を与えないといわれている。犬の場合、3cm以下の腫瘍は、それ以上の腫瘍がある犬に比べて明らかに予後が良い。猫の場合、3cm以上、2~3cm、2cm以下の悪性腫瘍がある猫の乳腺切除手術後におけるその後の寿命は、平均でそれぞれ4~12ヶ月、15~24ヶ月、3年以上との報告がある

 乳癌の肺転移が見られる症例は、実のところ、手術をするか、しないか、と悩んでいる間に転移していまうケースが少なくない。犬猫の乳腺腫瘍発生時の平均年齢は10歳である。日頃からボディータッチを行い、早期発見・早期手術により、転移の危険性を減らすことが重要である。

 また、初回発情前に避妊手術を行うことで、乳腺腫瘍の発生率を激減することができることも忘れてはならない。
 ★犬では初回発情以前に避妊手術を行うと、乳腺腫瘍の発生率は僅か0.05%である。しかし、初回発情後に避妊手術を行ったものでの発生率は8%、2回目の発情後に行ったものでは26%となり、急激にそのリスクが増大する。2回目の発情後の避妊手術は良性の乳腺腫瘍の発生率は低下させるが、悪性の乳腺腫瘍の発生率は変わらないと考えられている
 ★また、猫では6ヶ月齢までに避妊手術を実施すると、乳腺腫瘍の発生率はおよそ7分の1にまで減少し、2歳(文献によっては6歳)になる前までに手術を行うと乳腺腫瘍の発生率を低下させることが可能である。より最近の研究では、6ヶ月までに避妊手術を行うと91%、1歳までに避妊手術を行うと86%も乳腺癌のリスクが減少するという

文責:獣医師 棚多 瞳

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