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11月25日(木)のMRT「ペット・ラジオ診察室」は「ステロイド剤の臨床応用とその薬理」についてでした。

<今日のテーマ>前回はステロイドホルモンの生理作用について述べた。今回は「ステロイドホルモンの臨床応用とその薬理機序」について説明する。

ここで言う「ステロイドホルモン」とは「副腎皮質ホルモン」のひとつである糖質コルチコイド(グルココルチコイド)のことである
●諸々の生理作用と薬理作用があるが、薬理効果はステロイドホルモンの生理的濃度の数倍か、場合によっては10~20倍の血中濃度が必要である。そのため、ステロイドホルモン製剤は合成されたものを利用する。
●合成ステロイド剤は本来生体内に存在するコルチゾールの一部の構造をコハク酸や酢酸とエステル結合させて合成したものである。
●剤形は注射薬も錠剤も液剤(ローションやシロップ)(点眼を含む)、軟膏(眼軟膏を含む)がある。注射薬の場合、静脈注射が可能で加水分解の速い水溶性の高いものと、脂溶性が高く加水分解も遅い筋肉内注射用のものがあり、疾患や病態などにより使い分ける。

<ステロイド剤を使用する主な疾患>
1.自己免疫性疾患・皮膚疾患:ステロイド剤の抗体産生抑制と細胞性免疫の抑制により、自己免疫性溶血性貧血や特発性血小板減少症、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫性疾患には欠かせない。アレルギー性皮膚炎(アトピー、ノミアレルギー、食餌性アレルギー)には極めて有効である。ペニシリンやワクチンアレルギーにも重宝である。

2.中枢神経(脳脊髄)疾患:フリーラジカルからの保護や脳脊髄液の産生減少による頭蓋内圧降下作用、脳微小血管の保護作用を有する。脳腫瘍による浮腫に対して軽減効果や予防効果がある。急性の脳脊髄損傷には水溶性の合成ステロイドが有効である。外傷性の脳浮腫にはあまり効果がない。その他、副作用として多食症を引き起こすが摂食障害の動物に対しては、食欲刺激を促進する
特にミニチュアダックスで頻発する椎間板ヘルニアの場合、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウムを発症後可能な限り早急に使用することが重要である

3.気道疾患:慢性気道疾患の病態に関与しているプロスタグランジンやロイコトリエン、Platelet-activating factor を抑制する。気道拡張作用もある。喘息重積状態では即効性の水溶性プレドニゾロンを用いる。長時間作用を期待する場合にはデキサメサゾンも有効である。

4.ショック:敗血症性ショックには無効。出血性ショックに対しては、リン酸デキサメサゾン5mg/kg静脈内投与で腎臓や肺、腸管血流が改善されたという報告がある。合成ステロイドの急速静注は血圧低下を惹起し、ショックを悪化させる。使用時は適正な輸液が欠かせない。

5.:合成ステロイド剤はリンパ腫や多発性骨髄腫に対して細胞毒性をもつ。プレドニゾロンは肥満細胞腫に有効。しかし、合成ステロイド剤をリンパ腫に単独で投与すると多剤耐性を生じるため、抗ガン剤と併用する。
ステロイド剤の抗ガン作用については、不明な点も多いが、①グルココルチコイドが受容体に結合し、ガン遺伝子産物(c-Jun or c-Fos)と複合体を形成することでガン遺伝子の転写活性を抑制する。②リンパ球溶解作用と有糸分裂抑制作用を有する。③リンパ球の細胞内受容体に結合し、アポトーシスを誘導する。
①血液系癌(リンパ腫、リンパ性白血病、胸腺腫など)。②肥満細胞腫では、浮腫と炎症抑制による腫瘍の退縮作用や好酸球と好中球の浸潤を抑制する。③頭蓋内や脊髄腫瘍で徴候を呈する場合には顕著な改善作用がある。

6.眼疾患:局所投与は結膜や強膜、前部ぶどう膜の非感染性炎症に有効。合成ステロイドは角膜上皮の再形成を遅延させるため、投与前には潰瘍や損傷などを確認する。酢酸プレドニゾロンは脂溶性が高いため、角膜上皮を通って浸透し、眼内炎症に奏効する。

7.炎症性腸炎:さまざまな原因で惹起される炎症性腸炎では、腸管粘膜へのリンパ球やプラズマ細胞の浸潤が認められる。

8.副腎皮質機能低下症(アジソン病):腎臓でのNaの再吸収を促進し、逆にKの排泄を促しているホルモンの筆頭はミネラルコルチコイド(鉱質コルチコイド)であるが、ヒドロコルチゾンやプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンのグルコ(糖質)コルチコイドもその作用を有する。

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