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12月16日(木)のMRT「ペット・ラジオ診察室」のテーマは「ステロイドホルモンの副作用」についてでした。

<今日のワンコ>
 7歳・オスのパグの「エス」君。鼡径(ソケイ)部が腫れてきたが、鼡径内停留睾丸(陰睾)が腫瘍化したのではないかとういうことで手術。が、実は腫瘍化ではなく、陰嚢ヘルニアであった。去勢手術と鼡径輪の縫縮を行って、手術を終了した。
 ヘルニアと名のつくものは約20種類あり、椎間板ヘルニアや臍ヘルニア、外傷性の腹壁ヘルニアや横隔膜ヘルニア、会陰ヘルニアなどがよく遭遇する疾患である。
 陰嚢ヘルニアは臍ヘルニア程は頻繁に見られない。鼡径輪の欠陥から腹腔内の内容物が突出(脱出)する結果として生ずる。雄と雌の鼡径ヘルニアは、何らかの腹腔内容物が鼡径輪から皮下に突出して、鼡径部あるいは下腹部(両側あるいは片側)が腫れてくる。陰嚢ヘルニアはもちろん雄だけに起こり、同じく鼡径輪から突出した腹腔内容物が皮下ではなく、鞘状突起を通って陰嚢内(壁側鞘膜・臓側鞘膜の腹腔側)に突出するものを指す。本症例の突出内容物は大網にお一部であった。

<今回のテーマ>
 前回は、ステロイド剤の適応症例について、例えば自己免疫性疾患やアレルギー性皮膚炎、脳脊髄疾患など多くの症例で不可欠な薬剤であることを説明した。今回は、その副作用についてまとめた。
免疫抑制・易感染性:白血球を減少させ、好中球の遊走を抑制することから免疫を低下させ、感染症の誘発あるいは症状を悪化させる。犬のバベシア症や猫のヘモバルトネーラ症などは要注意。猫エイズの口内炎では消炎効果を期待してステロイド剤を用いるが、中長期に及ぶとかえってエイズウイルスの増殖を促す。

多食・多飲:中枢性に働いて食欲を増進させ、肥満を招く。多飲についても可逆的なADH(抗利尿ホルモン)を低下させて、尿量の増加させ、頻尿を呈する。

肝機能酵素の上昇:ステロイド剤は肝細胞への脂肪・グリコーゲン・水分の蓄積を促進するため、多くの症例で肝細胞の腫大(肝肥大)や肝機能の低下を招く。

高血圧・鬱血性心不全:ノルエピネフリンやアンジオテンシンⅡなどの血管収縮物質の作用を増強し、カリクレイン-キニン系やプロスタグランジン系、NOなどの降圧システムの活性を低下させる。このための高血圧が生じることがある。
※※※猫は一般にステロイド剤による副作用は少ないとされるが、ミネソタ大学にて1992年~2001年に来院し、鬱血性心不全と診断された271例の猫のうち、41例(15%)が予めステロイド剤を投与されていた。同グループは最近、皮膚疾患を有する猫を対象とした研究で、酢酸メチルプレドニゾロン(5mg/kg)を筋肉内投与すると血漿量が増加することを明らかにしている。

薬物相互作用:ステロイド剤の投与により、肝臓における薬物分解酵素であるチトクロームP450の分子種の一つを誘導し、併用している薬剤を分解して効果を減弱させる可能性がある。一部の抗てんかん薬や抗生剤などの併用には注意を要する。

骨格筋系:ステロイド剤による糖新生の促進のため、骨格筋力低下や委縮が起こる。

中長期な投与による問題点
①肝臓(10%が腎臓)での、ピルビン酸・乳酸・糖原性アミノ酸などからの糖新生の増加、インスリン抵抗性の増大、食欲増進作用によって糖尿病が起こる。
②医原性の副腎機能亢進症では、皮膚が菲薄となり、脱毛や膿皮症にも発展する。
③白内障
④ステロイド剤を大量に長期間使用すると、副腎の機能性委縮が起こって産生が低下し、生理的な濃度が得られなり、かえって炎症などが悪化する。これをリバウンドという。

ステロイド剤使用にあたっての臨床レベルでの留意点
①適応症と予期される副作用について、充分なインフォームド・コンセントを得る。
②可能なら、3日間までの短期間投与に心掛ける。
③それ以上使用する場合には、リバウンドを考慮してテイパーで漸減する。例えば規定量を1週間投与したならば、さらに1週間かけて漸減する。
④間違っても1ヶ月以上は連日投与しない。肝不全や感染症で死亡する可能性が高まる。⑤長期投与では隔日か、3日に1回か、週に2回など少用量の使用を常に心掛ける。
⑥投与の効果が芳しくない場合には、常に原因療法と他の手段を模索する。

※※※Pfizer社のDr.Sousaは犬のステロイド剤の年間投与量の上限をBW(体重)×30mgとしている。治療中、動物に重大な副作用が生じた場合、これ以上の使用量は裁判で不利があるということらしい

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