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1月27日(木)のMRT「ペット・ラジオ診察室」のテーマは「年末・年始の誤食の実例」についてでした。

 今回は「今年の年末・年始に実際に来院した症例」について、特に「誤食」の症例について述べる。

つまようじ
 「鶏から揚げ」に刺さっている爪楊枝を飲み込み来院。誤食後すぐに来院したため内視鏡により摘出した。
竹串
 「フランクフルト」に刺さっている竹串をそのまま飲み込み来院。食べている現場は見ておらず、気がついたら子供の手からフランクフルトは消失し、愛犬が舌なめずりしていた、とのこと。その後、吐き始め来院した。バリウム造影検査にて十二指腸内に竹串を確認したため、直ぐに手術で竹串を摘出した。十二指腸切開を行ったため、数日の点滴療法で、その間絶食・絶水を余儀なくされた。
たばこ
 お客さんの吸殻を誤食したため来院。催吐処置を行い、嘔吐した。
 たばこを摂取した場合、たばこに含まれるニコチンにより急性の胃腸障害とそれに続く神経障害が認められる。具体的には、流涎、嘔吐、頻脈、呼吸麻痺、振戦、痙攣、脱力などの症状が見られ、これらの症状は摂取後1時間以上経過してから表れる。
 犬では10mg/kgのニコチンを経口摂取すると致死的となる可能性があり、約1mg/kg以上の摂取で重症化すると考えられる。
 ・タバコ:13~30mg/本
 ・タバコの吸殻:5~7mg
 ・ニコチンパッチ:8.3~114mg/パッチ
 ※ニコチンパッチは禁煙中で使用している方が要注意である。場合によってはタバコの数倍ものニコチンが含まれている可能性があり、24時間使用後でも2~83mgものニコチンを含む。また、ニコチンパッチを丸呑みすると比較的ゆっくりとニコチンが吸収されるが、すぐに飲み込まず口の中に含んでいる状態ではニコチンは急速に吸収され、摂取後5分以内に血中濃度はピークに達する。ニコチンの放出はニコチンパッチの損傷程度に影響される。
 ※小型~中型犬では1本のたばこを誤食すると明らかな中毒症状を示す可能性が高い。
チョコレート(アルコール入り)
 アルコール入りチョコレートを1枚全て食べてしまったため来院。催吐処置を行い、嘔吐した。
 中毒の原因物質はテオブロミン・カフェインで、症状は6~12時間後に現れることが多い。具体的には、初期には嘔吐、下痢、多渇であり、その後多尿、興奮、振戦、頻脈、頻呼吸、不整脈、発作、昏睡などの症状が認められ、場合によっては死に至る。死亡原因の多くは不整脈、呼吸不全、高熱によるDICである。
 メチルキサンチン量(テオブロミン+カフェイン)が20~40mg/kgで軽度~中等度の臨床症状、40~50mg/kgで不整脈、60mg/kg以上で発作が認められる場合が多い。各食品のおおよそのメチルキサンチン量を以下に示す。
 ・ココアパウダー:27mg/g
 ・チョコレートの焼き菓子:18mg/g
 ・セミスイートチョコレート:5.5mg/g
 ・ミルクチョコレート:2mg/g
 ・ホワイトチョコレート:0.04mg/g
 ※つまり、小型犬では1枚のミルクチョコレート(約70g)を摂取すると中毒症状を示す可能性が高くなる。

 ちなみに、アルコールは5~8g/kgの経口摂取が致死量であり、小型犬で20度の焼酎だと1合弱に相当する。

文責:獣医師 棚多 瞳

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