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3月10日のMRT「ペット・ラジオ診察室」のテーマは「犬の人工授精の現状」でした。

 今回は「犬の人工授精の現状」について述べる。どうしてもこの子の子供が欲しい、相手の雄犬や雌犬を飼い始めたがうまく交配せず妊娠しない等のケースでは参考にしていただきたい。
 ただし、子犬が何匹産まれるかは予想不可能であり、近年では犬の寿命は延び、15、16歳もめずらしくない。そのため、要介護となるケースも少なくなく、そこまで面倒見られるのか否かをじっくり判断していただきたい。

●2004年、狂犬病予防法が改正され、犬の輸入が困難となり、犬種によっては空輸を規制された。そのため、海外からの優秀な犬の精液を導入する必要性が生じた。ただし、ジャパンケネルクラブでは、輸入凍結・低温精液による人工授精は獣医師が実施すること、としている。また、国内で採取された精液の凍結・低温精液による人工授精については認めていない。

●人工授精の方法

①新鮮精液による人工授精(これがよく行われる方法である)

・精液の採取
 精液の採取は、発情期にある試情雌の存在、できるだけ少人数の人がいる静かな部屋が最適条件となる。雄犬を試情雌犬に乗駕させ、陰茎が包皮から突出した直後に包皮を手指で後退させ亀頭球を採取者の手で握る。ただし、犬の性格や年齢などにより、病院での精液採取が困難なこともある。

・続いて、精液検査を行う
 精液の色調はスキムミルクの色から若干クリーム色の範囲にある。犬精液中の総精子数は2億~12億の範囲であり、第2分画の濃度は1億~7億/mlである。前進運動を示す精子の数は採取直後の希釈していない精液では75~90%が正常である。また、前進運動の速さも重要である。低温は精子の運動性を低下させるので、検査を行う際には暖めておいたスライドグラスを使用する。精液における形態学的正常率の正常範囲は65~90%である。精子の状態は授精率に大きく関わる。
・それでは、精液のどの部分を使用するのか。
 精液は3分画からなり、第1分画は1~2mlの透明な前立腺液、第2分画は1~2mlの白色の精子を含む精液、第3分画は5~20mlの透明な前立腺液からなる。精液を凍結するならば精子を含む第2分画のみ採取しなければならない。精子を直ちに人工授精に用いる場合は、1~2mlの前立線液を採取し、精液を他の希釈液で希釈せずに人工授精に供する。授精する精液の量は、精液の逆流を減らすため、大型犬種では3ml、小型犬種では2mlを超えてはならない。また、第3液を多く加えると精子の濃度が低くなり、不妊となるので注意が必要である。人工授精の結果、精子数2億では、8頭中7頭(87.5%)が妊娠し、平均産子数が6.0匹、また、精子数1億では、15頭中5頭(33.3%)の低い妊娠率であった。このように妊娠させるには、精子数が2億以上必要であるため、第2液(3~4億)をすべて人工授精に用いる必要がある

授精方法
 人工授精は、逆立ちさせた状態で、プラスチックカテーテルと注射器を組み合わせたものを用いて腟の奥に精液を注入して、この状態を10分ぐらい維持する。ただし、子宮内授精を用いる場合は、精液の注入後に雌犬の後躯を持ち上げる必要はない。

②凍結精液による人工授精(凍結精液は海外からの輸入のみ使用可能となる)

・精液はどれくらい持つのか?
 精液が凍っていれば採取から何年後の使用であっても問題はない。しかし、低温精液は採取後数日である。精液を運搬し2~3時間以上授精が遅れる場合、犬精液の生存性は22℃より4℃でかなり延長されるので、精液を精液用希釈液で希釈して4℃にて運搬しなければならない。

・授精方法
 低温精液の人工授精は、新鮮精液と同様に腟内授精で行う。
 輸入低温精液による人工授精は、採精、輸送状況に問題がなければ、妊娠の可能性の高い人工授精である。
 犬の凍結精液による人工授精は、外科的な子宮内授精、内視鏡を用いた授精、カテーテル法がある。凍結精液の外科的な子宮内授精は、腹部を数cm開腹して、左右の子宮角内に注入するため、手術時間は15分ぐらい必要となる。人工授精の時期を正確に決めて実施すれば、妊娠の可能性は高い。

※欧米では犬の精子バンクもある。欧米の精子バンクで最大のものはインターナショナルキャナインシーメンバンクで、そこで技術講習を受けた認定獣医師は国内で7名のみで、九州にはいない。
※外科的子宮内授精法は欧米では一般的な凍結精液の授精法である。

※最後に、当然ではあるが、雌が受精可能な時期か否かの判断も必要となる。その場合、膣スメアを参考にすることが多い。

文責:棚多 瞳

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