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4月7日(木)のMRT「ペット・ラジオ診察室」のテーマは「犬猫の皮下点滴」についてでした。

<はじめに> 
 点滴(輸液、補液とも言う)には下記に示した方法があるが、犬猫の場合、管理面や動物への精神的ストレス、経済性などの点から、特に最近、皮下点滴の有用性が益々注目を浴びるようになった。

<点滴の方法>
1.静脈内、腹腔内、骨髄内、皮下点滴がある。
2.静脈内点滴が最も一般的であり、水分や電解質(塩分)以外に、糖分やアミノ酸、脂肪成分、ビタミン剤など多くの成分や薬物を投与できる。
3.腹腔内輸液の適応は多くないが、例えば避妊などリスクの少ない手術の場合、静脈内点滴を補助する目的で、術中にリンゲル液を注入(投与)することは意味(有益性)がある。これは術中の腹腔内からの水分蒸発など(ガーゼに吸い込まれる)による術後の腹腔内臓器の癒着予防にもなる。
4.犬猫の骨髄内輸液は一般的でない。人では静脈の確保が困難な新生児で実施される。特徴は静脈内(血管内)投与と同等の即時性効果がある。

<皮下点滴の特長(静脈内点滴との相違点)>
1.静脈点滴は、大量出血などによるショック状態は別として、急速投与が不可能である。この点、皮下点滴は10~20分程度の短時間で、静脈内点滴の1日分を投与することができる。
※ショック時の静脈内急速投与は90ml/kg/hrで、意識や血圧の回復が見られたら速度を落とす。
2.皮下点滴は投与(処置)にかかる時間が短時間で済むため、よく動く症例や興奮状態にある動物に適している。このような動物での静脈点滴は、点滴のチューブをぐるぐる巻きにしたり、点滴ルートを噛み切ることが多々ある。
3.皮下点滴は吸収が遅いため、効果の発現に時間がかかる。この場合、最初の1時間~数時間は静脈点滴を実施し、その後皮下点滴を行うことは良い方法である。
4.皮下点滴の基本液は必ず体液(=血液)と浸透圧が等しく(=等張液)なければならない。すなわち、リンゲル液や生理食塩液であり、等張に調合されたものであっても、ブドウ糖などを含んだものを投与してはならない。
※リンゲル液や生理食塩水にブドウ糖液を加えたものを皮下点滴してはならない。体液と等張な5%ブドウ糖液も使用してはならない。リンゲルなどに添加されたブドウ糖は浸透圧を高め、投与部位の皮下に血液から水分を奪い、脱水を助長する。また、感染症を惹起する危険性が高い。
※アミノ酸も浸透圧が高くなるため、皮下投与は避ける。
※脂肪乳剤:静脈内投与のみ。皮下からの極めて吸収が悪い。
※ビタミン剤など:投与部位での局所刺激作用が強く、痛みや疼痛がみられる。
※上記の製剤は全て皮下投与を避けなければならない。それらはワンショットで静脈内投与が可能であり、また経口摂取が可能な症例では給餌するか、食欲の無いものでは強制給餌が勧められる。
5.特に、利尿を目的に皮下点滴をする慢性腎不全の犬猫では、自宅での飼い主による実施が可能である。時間的制約や経済的負担の軽減になる。また、処置時間が短いため通院も可能である。数年間、週に2~3回の皮下点滴をしている犬猫も少なくない。

<実施方法>
◆通常の点滴ルートに翼状針や静脈留置針、血液透析用カニューラなどをセットして行う。
◆厳守すべきは、投与部位の毛刈りと徹底した、かつ丁寧すぎる消毒である。これを励行すれば、例え糖尿病などの持病のある動物や担癌動物であっても何ら問題なく長期間実施できる。

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