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7月14日(木)のMRT「ペット・ラジオ診察室」で放送できなかった内容について

<正常心電図>
洞房結節で刺激生成→心房筋→房室結節→ヒス束→脚→プルキンエ線維→心室筋の順に伝導(図1)。
・P波:心房筋の活動。
・QRS群:心室筋の活動。
・T波:心室筋再分極。

<不整脈(Arrhythmias)>=心拍数や調律が一定でない状態
・原因:低カリウム血症、低酸素症、貧血、胸部外傷、胃拡張胃捻転、腹部腫瘤、敗血症、アシドーシス、全身性炎症反応症候群(SIRS)、中毒、過剰カテコラミン、心筋炎、心疾患。

○洞性頻脈:正常よりも速度が速い心調律(洞房結節から発生し正常に伝導する調律)。
○洞性徐脈:正常よりも速度が遅い心調律(洞房結節から発生し正常に伝導する調律)。
○洞停止:RR間隔の少なくとも2倍長く続く洞性活動の停止。
○洞性不整脈(イヌでは正常):洞房結節から発生し正常に伝導する調律が遅くなったり、速くなったりする周期を特徴とする。通常呼吸と関連がある。迷走神経緊張の変化の結果、吸気時に亢進し呼気時に低下する傾向がある。
○ワンダリングペースメーカー(イヌでは正常):吸気時に高く棘状となり、呼気中に平坦となるようなP波の周期的変化。
○洞房ブロック:洞房結節の興奮が抑制されたり、洞房結節から心房への興奮の伝導が障害される。PP間隔は正常な場合と比べて2倍以上の整数倍。
○房室ブロック:洞房結節からの興奮が房室結節へ伝播する間で障害。
・第1度房室ブロック:PQ間隔が延長したもので、QRS波の脱落はない。
・第2度房室ブロック:心房の興奮が一部心室に伝導しないもので、2つの型がある。
MobitzⅠ型:心房は規則的に興奮するがPQ間隔が徐々に延長していき、QRS波が脱落するタイプ。
MobitzⅡ型:PQ間隔が延長することなくQRS波が脱落するタイプ。
・第3度房室ブロック:心房の興奮が心室に伝導せず、心房と心室が連動せずに別々の調律で興奮しているもの。
○脚ブロック:房室結節を出た興奮はヒス束を通り、左右の脚に分かれて心室に伝えられるが、この興奮が伝わらなくなる。右脚ブロックと左脚ブロックに分けられる。
○WPW症候群:房室間の興奮伝導が健常な伝導路以外の伝導路を通って心室へ伝わる。
○心房性期外収縮:房室結節以外の心房で発生するインパルスが心室へ伝わる。PP間隔が不整である。
○房室結節性期外収縮:房室結節およびヒス束で発生するインパルス。QRS群とP波の出現とは一様な関係を示さない。
○心室性期外収縮:洞房結節からの興奮伝導を待たずに心室の一部でインパルス発生。P波は消失。
○心房細動(粗動):心房全体がまとまった収縮を行わず無秩序、不規則、頻回収縮する。170~300回のものを粗動、300~600回のものを細動として区別する。
○心室細動(粗動):心室がまとまった収縮をせず、各部分でインパルスが発生。
○洞不全症候群sick sinus syndrome(SSS):洞房結節の機能障害により徐脈性不整脈が引き起こされ、めまい、運動不耐性,失神などの臨床症状が現れる病態で下記に分類される。
・Ⅰ型:高度の洞性徐脈(犬では30回/分以下の徐脈が持続)
・Ⅱ型:洞停止または洞房ブロックにより心房興奮が脱落するもの
・Ⅲ型(徐脈頻脈症興奮):Ⅰ型またはⅡ型に上室頻脈性不整脈を合併するもの
○アダムスストークス症候群:不整脈により心拍出量が急激に減少し、それに伴う脳血流量の減少により、めまい、意識消失、痙攣などの一過性の脳虚血症状が起こる病態で、洞房ブロック、房室ブロック、心室頻拍、洞不全症候群Ⅲ型によるものを含む。
・犬や猫では約6秒以上の心室拍動の停止により失神発作が見られる。

<臨床的分類>
・治療の必要がない不整脈:臨床症状や明白な基礎疾患が見られない以下の不整脈で、洞性不整脈、洞停止、洞房ブロック、洞徐脈、洞頻脈、1度房室ブロック、第2度房室ブロック(MobitzⅠ型Ⅱ型)など。
・治療が必要な不整脈:失神や虚脱などの臨床症状を伴う以下の不整脈で、第3度房室ブロック、洞不全症候群、心房静止、心房細動、心室細動、心室頻脈、アダムスストークス症候群を呈する不整脈、多源性心室期外収縮など。

<治療>
①原因の除去による状況の改善(基礎疾患の治療)。
②不整脈に対する内科的治療。
・抗コリン作動薬。
・β作動薬。
・アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬。
・グルココルチコイド薬。
③ペースメーカーの植え込み。
・獣医療では明確なペースメーカー植え込み術の実施基準は存在しないが、AHA、ACCのガイドラインを利用する。
・ペースメーカー埋め込み術の1年後、2年後、3年後の生存率はそれぞれ70%、57%、45%。

文責:獣医師 藤﨑 由香

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