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11月3日(木)のMRT「ペット・ラジオ診察室」のテーマは「副腎皮質機能亢進症Part 2」でした。

8.診断:臨床症状および血液生化学検査において、副腎皮質機能亢進症が疑われる場合には、確定診断を進めるため以下の試験を実施する。
・ACTH刺激試験
○外因性ACTHを投与前後のコルチゾール値を測定することで、約80%は診断可能である。
○ACTH刺激試験で副腎皮質機能亢進症が強く示唆される場合は超音波検査低用量デキサメサゾン抑制試験を行う。
・超音波検査
○PDHの症例の場合、副腎が両側性に正常もしくは腫大(直径0.75cm以上、最大2cm以下)し、辺縁は滑らかで規則的な画像が見られる。
○ATの症例の場合、一般的に単独(一側)の副腎腫瘤として確認され、最大直径が1.5~8cmを超える場合もある。対側の正常な副腎はATによって引き起こされる副腎萎縮のため小さく(最大0.3cm未満)なり、よって左右不対称になる。
・低用量デキサメタゾン抑制試験
○正常では、低用量デキサメタゾン投与によって下垂体からのACTH分泌が抑制され、血中コルチゾールの持続的低下を引き起こす。約85%診断可能である。
・高用量デキサメタゾン抑制試験
○ATの症例はACTHに関係なく機能している為、高用量デキサメタゾン投与によってもコルチゾール値は抑制されない。一方、PDHの症例では高用量のデキサメタゾン投与すればほとんどの場合、ACTH 分泌は抑制される。ATとPDHの鑑別に有効である。
・内因性ACTH値
○PDHとATの鑑別に有効なことがある。検体の取り扱いに注意が必要である。
・CT、MRI検査
○副腎の大きさや対称性、下垂体巨大腺腫を検索する為に用いられる。

※初診時の基本所見:「クリニカル ベテリナリー アドバイザー、p1046」(犬と猫の診療指針、長谷川篤彦 監訳、2010年、インターズー社)による
●一般血液検査:成熟好中球増多症、単球増多症、リンパ球減少症、好酸球減少症、血小板増多症。
●血清化学検査:
○犬:ALPの上昇、高コレステロール血症、高血糖(通常軽度)。
○猫:高血糖(80%で糖尿病を併発している)、高コレステロール血症、ALTの上昇、ALPの上昇(症例の30%)。
●尿分析および細菌培養:比重1.020以下、蛋白尿が一般的、40~50%で感染(膀胱炎)。
●腹部X線検査:肝腫、膀胱結石、副腎の石灰沈着、骨密度減少症。
●胸部X線検査(3方向):転移の有無の確認、肺血管陰影低下と肺胞浸潤(二次的血栓塞栓症)、気道の石灰沈着。
●血圧:高血圧が起こる。
●眼底検査:網膜出血が起こる。

9.治療

・トリロスタン
○日本でも動物薬として最近承認された。
○薬理作用はコルチゾールの合成阻害(3‐βヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ競合拮抗薬)による。
・ミトタン
○薬理効果は副腎皮質の不可逆的破壊による。副腎皮質機能低下症の臨床症状を起こさずに副腎皮質機能亢進症の状態を改善する方法と、副腎皮質を破壊して副腎皮質機能低下症へと転換させる方法(内科的副腎摘出)がある。
・副腎摘出
・下垂体摘出
・放射線治療
○下垂体巨大腺腫による神経症状の軽減または消失が期待できる。

10.予後
・AT
○副腎腺腫および転移のない副腎腺癌の症例で手術が成功した場合の予後は良好である。副腎摘出後1カ月を生存した場合の平均生存期間約36カ月との報告がある。 
○しかし、転移のある副腎腺癌の症例は、診断されてから1年以内に死亡するケースが殆どである。
・PDH
○平均生存期間約30カ月で、若いほど生存期間は長い。
・肺血栓塞栓症
○PDHの治療を受けている犬やATの為に副腎摘出した犬で最も多くみられる。治療の成否と発症には相関がない。急性の呼吸困難や起座呼吸が見られる。
 
 猫の副腎皮質機能亢進症の発生はまれであり、診断および効果的な内科療法は確立されていない。

 
文責:獣医師 藤﨑 由香

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