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1月19日(木)のMRT「ペット・ラジオ診察室」のテーマは「外科シリーズ・第4弾:犬の乳腺腫瘍摘出術」でした。

乳腺手術の術式
1.部分的切除:例えば尾側の2つあるいは3つ(第3~5乳腺)をまとめて摘出する方法。尾側の場合は鼠径リンパ節も同時に切除する。尾側の方が頭側(第1~2乳腺)より乳腺腫瘍が発生し易い。勿論、乳腺を切除した箇所には新たな乳腺腫瘍の発生はない。頭側(第1~2乳腺部)の部分切除では腋下リンパ節の腫大や3cm以上の乳腺腫瘤が存在しない限り、腋下リンパ節の廓清手術を行わない。

2.片側乳腺全摘出術:15~20年前までは、単発性の腫瘍であっても片側の乳腺を全摘出する手術法が主流であり、もう片方にも乳腺腫瘍が有れば、最初の手術から1ヶ月か2ケ月後にもう一方の片側乳腺全摘出術を行っていた。現在では一部の大学病院などを除いては実施されない。この片側乳腺全摘出術の利点は、新たな乳腺腫瘍の発生がないことである。しかし、上記の部分切除した症例との寿命の比較では両者に差異のないこが明らかとなっている

3.結節状の乳腺腫瘍摘出:他の腫瘍切除と同様に2~3cmのサージカルマージンを確保して個々の乳腺腫瘍を摘出する。老齢犬や心臓病・腎臓病などの合併症があり、麻酔のリスクが高い症例が適応となる。この乳腺腫瘍のみ(結節)の摘出は、可動性で5mm以下の腫瘤で可能だが、局所再発の危険性が増す

※※※結節の切除か、部分あるいは乳腺の全摘出をするかの、摘出方法は腫瘍の大きさや発生部位、腫瘍の数による。あくまでも乳腺腫瘍外科の基本は乳腺主腫瘍を十分なマージン(可能であれば全ての面で最低2cm)を確保して切除することであるが、飼い主とのインフォームドコンセントを重要視しなければならない。

術式の選択で考慮すべき点
1.乳腺部に腫瘤がある場合、乳腺由来の腫瘍かあるいは別の組織の腫瘍かは細胞診(FNA)で確認する必要性がある。そうすることが望ましい。

2.TNM分類[腫瘍の大きさが3~5cmは病期がⅡ、5cm以上はリンパ節や肺・骨への遠隔転移が無くとも病期Ⅲ]に基づき、腫瘍の大きさが3cm以上、特に5cm以上ある腫瘍は要注意で悪性の可能性が高い。あらゆる面(方向)で最低で2cmのサージカルマージンを有する手術を行う。可能なら、部分的乳腺切除あるいは片側全乳腺摘出とリンパ節廓清を行う。

3.胸部レントゲン撮影で肺への遠隔転移が存在する場合、基本的には手術しない。

4.但し、遠隔転移が存在したとしても、腫瘍が余りにも大きかったり、自壊して出血や感染が見られる場合にはQOLを念頭に、部分的腫瘍切除(リンパ節廓清の実施は症例により考慮する)を行う。

5.炎症性乳癌(病変部の乳腺はびまん性で固く、痛みを伴った水腫を示す。炎症で紅くぽかぽかした感じ。近傍の四肢にも影響がある。皮膚に数珠状の結節が形成される)は転移が有無にかかわらず、手術は実施しない。しかし、緩和外科が選択される可能性はある。

まとめ
1.乳腺腫瘍はそれぞれの乳頭を中心に乳腺が孤立したものでは無く、他の乳腺と血管やリンパ節で連続しているため、乳腺腫瘍が発生した場合には、出来る限り広範囲に切除することが望ましい。限局して切除するには最低2cm、できれば3cmのサージカルマージンを確保して切除する。大きな腫瘍では乳腺の下部組織である筋膜や筋肉も含めて切除する。

2.乳腺腫瘍には50:50:50ルールというものがあり、避妊手術をしていない犬の50%が罹り、うち半分が悪性で、悪性のうちまたその半分が転移するというもの。これは、未避妊の雌犬では高率に罹患するが、転移しにくい腫瘍である。が、25%は転移するという腫瘍である。炎症性乳癌以外は早期発見・早期外科手術で完治する可能性が高い疾患である。

3.手術の摘出範囲については、獣医師との十分な話し合いが必要である。特に、短頭種や心臓病、呼吸器疾患などをもつ症例では、片側全摘出など侵襲の高い手術法は選択しない。それでなくとも、片側乳腺全摘出術は痛みが半端ではない。

4.化学療法やホルモン療法、避妊手術の有効性は示されていない。

5.術後経過観察
・術後は2~3ヶ月毎に、胸部レントゲン検査や局所の附属リンパ節のチェックを行う。
・組織検査で悪性の場合には2年間の経過観察が推奨される。

6.予後と転帰
・良性腫瘍では、完全な切除により予後は良好である。
・腫瘍の大きさが3cm以下のものは3cm以上よりも予後が良好である。
・上皮性腫瘍(腺癌、嚢胞性腺癌、癌)は肉腫、悪性混合腫瘍や癌肉腫よりも予後は良好である。
・生存中央値は6.5ヶ月(充実癌)、12ヶ月(浸潤性腫瘍)、29カ月(非浸潤性癌)、10ヶ月(肉腫)、18ヶ月(癌肉腫)である。
・炎症性癌では予後不良である。
・高分化で低悪性度、浸潤性を示さない病変に比べ、リンパ管や血管浸潤を示す未分化で高悪性度、浸潤性腫瘍(組織的病期Ⅱ~Ⅲ)では予後は不良である。
・大型の腫瘍(病期Ⅱ~Ⅴ)、リンパ節への転移のあるもの(病期Ⅳ~Ⅴ)、遠隔転移(病期Ⅴ)は予後不良である。
・悪性腫瘍における24ヶ月無病期間は27~55%である。

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