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6月21日(木)のMRT「ペット・ラジオ診察室」のテーマは「健診での血液検査の重要性」です。

 入梅して2週間あまり。8年ぶりの「6月台風」上陸。フィラリア予防や混合ワクチン、狂犬病ワクチンは忘れずに終えていますか。ノミやダニの季節でもありますが、これも基本は予防です。寄生する前に、また大繁殖する前に予防薬を病院で求めましょう。

 4~6月はフィラリア予防や混合ワクチンなどで来院する機会が増すことを述べましたが、今回は健康診断、特に血液検査の意義について話ます。当院では犬や猫が5~6歳以上になると健診を勧めています。犬猫の5~6歳は人間に換算すると40~50歳以上になります。病院によって差がありますが、3~5千円前後のコストで大まかな血液検査が可能です。腎臓病や糖尿病、高脂血症などを早期に発見することが可能です。同時に、触診では皮膚の腫瘍や腹腔内の異常、聴診では小型犬に多い心臓の弁膜症(僧帽弁閉鎖不全症)を簡単に見つけることができます。さらに、レントゲン撮影やエコー検査を実施すれば心臓肥大や気管狭窄、肝臓腫大、胆嚢の異常、腎臓結石や膀胱結石なども確認できます。

例えば、腎臓病(腎機能の低下)の早期発見は処方食に変えるだけで、犬では平均生存期間を3倍以上延長させ、腎臓病の進行度合いも72%低下させたという文献があります。腎臓の機能低下が正常の60~70%以上低下すると血液検査でクレアチニン値や尿素窒素値の上昇が見られます。それらが正常範囲内であっても、それ以前の測定値より上昇していれば処方食の開始など治療を考慮すべきです

猫の腎不全の処方食療法では、ステージ2・3の猫を2年間経過観察・研究した結果、一般的な成猫用フードを与えていたものでは腎臓病で死亡した例が21.7%であったが、腎臓病食を与えた群では死亡例は無かったとの報告があります。ステージ分類は後述を参照

犬の僧帽弁閉鎖不全症では、雑音が徴収されてもそのまま放置していれば2年以内に発症するところを、投薬(ACE阻害剤=血管拡張剤)を開始することで発症を5年間まで延長できることが分かっています。

また、肥満は肝疾患(脂肪肝)、骨関節疾患(肥満犬の24%)、糖尿病、高脂血症、心疾患(呼吸効率の低下、過剰な脂肪組織への血液潅流増加のため心臓負荷が増す)、呼吸困難(呼吸器周囲への脂肪沈着→咽喉頭の狭窄)、皮膚病など感染症のリスクを高めることが明らかになっています。→病院で理想体重に到達できるフードの量を計算してもらえばおよそ70~100日で減量可能です。

 言葉で言うのは簡単ですが、実際に病気を予防したり、発症を遅延させるのは容易ではありません。しかし、動物の場合、飼い主の考え方を変えることや管理法を見直すことで病気を早期発見し、彼らの寿命を延ばすことは十分に可能です。犬猫は1年で4~7歳前後年を取ります。5~6歳以上のペットでは、1年に1回の血液検査を是非実施して下さい。

<イヌ・ネコの腎不全の分類>
第Ⅰ期(予備能力の減少:GFRが正常の50%以下)・・・臨床兆候はなし。腎臓が徐々に障害を受ける。
第Ⅱ期(代償性腎不全期:GFRが正常の50~30%)・・・多飲多尿の症状。腎機能検査の軽度異常。
第Ⅲ期(非代償性腎不全期:GFRが30~5%)・・・腎不全期。クレアチニンおよび尿素窒素値の上昇。
第Ⅳ期(尿毒症期:GFRが正常の5%以下)・・・尿毒症が併発。多彩な臨床症状。末期腎不全。

<ヒトの慢性腎臓病(CKD)のステージ分類>
慢性腎臓病のステージ(病期)は5段階に分けらている。各ステージは、腎機能の評価基準である糸球体濾過量(GFRml/分/1.73㎡)を90以上がステージ1(ほぼ正常のGFRを認める腎障害)、60~89がステージ2(軽度のGFR低下を認める腎障害)、30~59がステージ3(中等度のGFR低下を認める腎障害)、15~29がステージ4(高度のGFR低下を認める腎障害・透析または移植の準備)、15未満がステージ5(腎不全・透析または移植の導入)として区切っている。

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