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7月26日(木)のMRT「ペット・ラジオ診察室」のテーマは「犬猫の線維反応性疾患」についてです。

 先週は「食物繊維の性質あるいは働き」について述べた。今週はその特徴を利用しての病気の治療や予防について解説する。線維を食物として摂取することで各種の病態にに有益である場合、それらの疾患を「線維反応性疾患」と総称している。線維質は消化管や糖代謝および脂質代謝に対する生理学的作用をもつため、消化器疾患、糖尿病、高脂血症、肥満、腎疾患などに有効である。一般のフードに含まれる繊維質の割合(乾物%)は約1~4%であるが、約1%の場合を低繊維療法食、約6~16%の含有率を中線維療法食、約16~30%を高線維療法食という。以下に「線維反応性疾患」を具体的に説明する。

1.消化器疾患
○適応疾患…大腸性下痢(線維の増量が好ましい場合)
○消化管内残渣、便の水分含有量、腸内細菌数による便容積を増加させる。これにより便通がよくなる。
○大腸性下痢では便容積の増加により腸管を刺激し分節運動を増加させることにより、腸内容物の結腸滞在時間を延長し、腸内容物からの水分吸収時間を延長させて便の性状を正常化する
腸内細菌叢の増殖を促し、サルモネラ菌、ウェルシュ菌などの病原性細菌の増殖を阻害する。また、エンテロトキシンとも結合し、結腸に対する毒性を減少させる。 
短鎖脂肪酸(SCFA)結腸粘膜細胞に直接栄養供給することで粘膜機能を改善する。

2.糖尿病
○粘性を高めることによる糖質の消化遅延と吸収を阻害する。糖質吸収を遅延させることで食後の急激な血糖値上昇を抑え、血糖値の安定を促進する。
○肥満はインスリン抵抗性と関連するため、高線維食の給与による体重の減量が期待される。また、線維質の発酵により生成されるSCFAはインスリン分泌を刺激する

3.高脂血症
○水溶性食物線維が関与する。保水力に優れるため胃内停滞時間が延長され、消化スピードも遅くなる。そのため、コレステロール吸収を抑制する。胆汁酸合成時にコレステロールが消費され、血中コレステロールは低下する。

4.体重減量
○食物線維の水分保持性によって水分を含み容積が増加する。このことによって同じカロリーの食事を与えても、満腹感が得られる。糖やコレステロール吸収抑制作用によっても減量効果がある。

5.便秘
○水分保持性の高い可溶性線維を配合することによって糞便の粘滑性を高めスムーズな排便をサポートする。特に猫での巨大結腸症のリスクを軽減することができる。

 以上、2回にわたり食物繊維の特長と適応疾患について解説した。食物繊維に関しても今回示した以外に未解明な性質が存在するであろうが、ここでは現在分っている働きがどのような疾患に応用されているかについて述べた。海外の大手の処方食メーカーからは数多くの療法食が提案され市販されている。次の機会には、さらに具体的な適応についてまとめてみたい。

文責:獣医師 藤﨑 由香

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