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今週の症例(2013年3月30日)No.7:雑種犬の膀胱および尿道結石

[症例]:12歳の雑種犬、雄。8.76kg。
[主訴]:前日から食欲廃絶、元気消沈との主訴で来院。
[診断]:腹部触診で拡張顕著な膀胱を触知。レントゲン検査および腹部超音波検査で膀胱内に複数の膀胱結石を確認(最大直径2.0㎝程の結石が確認できる限りで10個)。陰茎骨基部および精巣付近の尿道内にも結石と思われる陰影を確認。血液検査でクレアチニンが2.8㎎/dlと高く、尿道内の結石による尿路閉塞に続発した急性腎不全と診断。
[治療]:カテーテルにて尿道結石を膀胱内に押し戻し、排尿処置を実施。膀胱内にカテーテルを留置し、腎不全と膀胱炎が落ち着いた第7病日に外科手術による膀胱結石摘出を実施。摘出された結石はリン酸マグネシウムアンモニウム(ストラバイト)であった。

[ワンポイント講義]:
本症例での尿道閉塞の原因であった結石の膀胱内逆送処置は、通常の栄養カテーテルでは歯が立たなかった。そのため、マスクによるイソフルレン麻酔とブトルファノールによる鎮痛処置を行い、骨折用のキルシュナーピン(もちろんだが先端が丸い方)を挿入して閉塞を解除した。※第7腰椎と仙椎間での硬膜外麻酔も選択肢の一つであろう。閉塞解除には金属カテーテルや(小型犬であれば)歯科用の超音波を利用した結石粉砕も試す価値があろう。
術式は、尿道内結石を全て膀胱内に押し戻し、膀胱切開によって1つ残らず摘出する。完全摘出は術中、ペニス側からと膀胱側からのカテーテルでしつこくフラッシュすることが肝要である。
本症例のように腎機能の低下が認められる場合には、手術を急ぐべきではなく、機能の改善と膀胱炎をコントロールしてからで遅くはない。否、時間を置いて手術を行うべきである。その間、長期の尿道カテーテル留置を余儀なくされるが、この管理には飼い主の協力が欠かせない。治療の成功には飼い主側の努力が必須条件である。

文責:獣医師 藤﨑 由香

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