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今週の症例(2013年5月6日)No.11:MDの頸部椎間板ヘルニア

[症例]:5歳のミニチュアダックスフンド。避妊雌。
[主訴]:元気がなく頸部疼痛を主訴に来院。
[診断]:頭部を伸ばし頸を竦める恰好でわずかに後脚がふらつくが、神経学的検査では異常は認められず、頸部筋硬直および頸部疼痛が認められた。レントゲン検査ではC2-3間(第2・第3頸椎間)に椎間板の石灰化ならびに椎間腔の狭小化が見られた。頸部椎間板ヘルニアと仮診断。安静の指示とステロイド剤を1週間投与し、頸部コルセットを1カ月間装着した。※「C」はCervical(頸の)の略

[ワンポイント講義]:
①椎間板ヘルニアは脊柱管内に椎間板の髄核が脱出(HansenⅠ型)あるいは線維輪が突出(HansenⅡ型)することにより脊髄が物理的に圧迫され、病変部よりも尾側の神経障害を生じる疾患。
②ミニチュアダックスフンド、ビーグル、ペキニーズ、シーズーなど軟骨異栄養犬種は若齢でも髄核の変性を起こし易い好発犬種である。一般にHansenⅠ型は若齢(3~6歳)で急性に発症、HansenⅡ型は中~高齢(8~10歳)で慢性経過をたどることが多い。
③80%以上が胸腰部でみられ、14~16%の症例で頸部に発生がみられる。頸部椎間板ヘルニアの大部分がHansenⅠ型で小型犬によく見られる。ビーグル、シーズー、ペキニーズでは胸腰部よりも頸部での発生が多い。頸部椎間板ヘルニアの44%はC2-3間、次いでC3-4間で認められる。
④症状は頸部の激しい疼痛が特徴で、頸部硬直や前肢虚弱あるいは跛行が見られる。胸腰部の椎間板ヘルニアと異なり、脊髄圧迫による四肢の不全麻痺と片側不全麻痺症状は軽いか全く示さない場合も多い。深部痛覚が消失するような重度な麻痺を生じることはほとんどない。
⑤診断には神経学的検査および単純レントゲン検査を実施し、確定診断には脊髄造影検査やCTあるいはMRI検査が必要となる。単純レントゲン検査では椎間板の石灰化や椎間腔の狭小化を確認するだけでなく、椎間板脊椎炎や椎体腫瘍などの疾患を鑑別する必要がある。
⑥治療は、麻痺症状がない場合、先ず内科療法を実施することが多い。絶対安静とNSAIDsあるいはステロイド剤による鎮痛を行う。内科療法により症状の改善が認められないケースや休薬により再発する症例で麻痺を伴う症例では外科療法を考慮する。しかし手術では脳幹部に近い頸部脊髄を操作するため出血による脳幹部圧迫や医原性脊髄損傷など重大な合併症を引き起こすリスクがある。外科療法の術式としては腹側減圧術、片側椎弓切除術あるいは背側椎弓切除術を行うが、それぞれの症例では病変部位の範囲(椎間腔の数)と椎間板物質の位置によって術式を選択する必要がある。一般論(個々の症例で要検討)として、複数個所の場合には片側椎弓切除術もしくは背側椎弓切除術による減圧術を、脊柱管内に逸脱した椎間板物質がある場合には腹側減圧術を選択すべきである。
⑦保存療法を実施した場合の再発率は30~50%と高いため、肥満および跳躍運動は絶対に避け日常生活での予防が大事である。

文責:獣医師 藤﨑 由香

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