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6月6日(金)のMRTラジオ「ドクター・ヒデのワンニャン譚」は「いわゆる虫歯の人との違い」です。

 犬猫と人の病気で根本的に異なることを話していこうと考えています。そこで第一弾は歯の病気についてです。

 犬や猫の虫歯みたことありますか?虫歯とは専門的には齲歯と言われ、口腔内の細菌が糖から作った酸によって歯が削られてしまった状態を言います。犬ではまれに、猫では極めてまれに虫歯がみられることがありますが、人と比較すると圧倒的に少ないです。
甘いものを食べると虫歯になるなんてよく言いますが、犬、猫は食べませんよね。それで虫歯は少ないのでしょうか?他に何か違いがあるのでしょうか?

 糖分が虫歯と関連するというのは間違いないですが、人での研究で砂糖の摂取量と虫歯の発生率は比例しないという結果が出ています。摂取量だけが問題ではなくて、口腔内の環境と摂取の仕方が問題になります。人の歯と犬や猫の歯ではまず本数が違います。犬では42本、猫は30本あります。そして噛み合わせも人とは異なります。人の臼歯は文字通り「うす」のような形をしていて上下の臼歯で食べ物をすり潰すためにあります。一方犬、猫は裂肉歯と呼ばれ上下が微妙にずれて噛み合わさるため、ハサミのように働き肉を切り裂いたり、噛み砕くのに使います。この歯の構造の違いが虫歯のなりやすさに関連していると考えられています。虫歯は歯垢(食べカスや細菌とその代謝物)がまず付着することから始まります。口腔内には多くの細菌が存在するが、齲蝕を引き起こす最も重要な菌がミュータンス菌といわれています。細菌は糖質から酸を産生します。酸が大量に産生されると口腔内のpHが酸性に傾き、歯の表面のエナメル質を溶かします。唾液の作用によってアルカリに戻し、溶けた歯を補修する働きがありますが、補修しきれなかった場合が齲歯になります。人の臼歯は溝や歯間に歯垢が蓄積しやすく虫歯にもなりやすくなります。

 他にも人間の唾液は弱産生pH6.5~7.0、一方犬・猫の唾液はアルカリ性pH8~8.5です。pH5.5以下になるとエナメル質は溶けだすと言われますが、たとえ細菌が酸を産生しても人と比較してエナメル質が溶けるほど酸性になりにくいことになります。また虫歯の原因となるミュータンス菌はアルカリ性の環境では増えにくいとされています。
唾液に含まれる消化酵素にも違いがあります。咀嚼する人の唾液中にはアミラーゼと呼ばれるでんぷんを分解して糖にする酵素が存在していますが、すぐに呑み込んでします犬猫にはごく微量しか含まれていません。このため口腔内ででんぷんが分解されて糖がとどまる可能性がさらに低くなります。

 犬猫は虫歯になりにくいのにはさまざまな理由があります。では犬猫は歯の心配をしなくても大丈夫かというと、実は歯の病気は多いです。3歳以上の犬の80%以上が歯周病という結果もあるくらい歯周病が多いです。来院する患者さんも歯石がついている子はとても多いです。犬猫の歯垢は3-5日で歯石になります。歯垢や歯石内の細菌が歯の表面で毒素を産生し、その毒素に対する炎症反応が起こります。これが歯周病です。悪化すると歯槽膿漏に進行していきます。口臭や歯がグラグラして抜けたり、場合によっては鼻梁部が腫れたり、副鼻腔炎を起こしくしゃみや鼻水が見られます。できてしまった歯石を除去するには超音波スケーラーでの処置が必要になりますが、犬猫の場合は全身麻酔が必要になります。

 予防するには人と同じで歯磨きできるのが理想ですが、突然歯ブラシを使った歯磨きをしようとしても無理なことが多いです。子供のころから口の中を触らせるようにしつけをすることが肝心で、指に巻いたガーゼでこすることからスタートするといいでしょう。柔らかい歯垢の段階で除去することが大事です。ここで気をつけなければならないのがキシリトールです。人の歯磨き粉などに含まれますが犬猫は低血糖を起こして最悪の場合死亡してしまいます。絶対に使用しないように注意してください

文責:獣医師 藤﨑 由香

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