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7月4日(金)のMRTラジオ「ドクター・ヒデのワンニャン譚」は「慢性腎不全の食事療法における犬猫とヒトとの相違点」でした。

(藤﨑)今日は人と犬猫の慢性腎臓病の食事療法の相違点についてお話します。

(戸高アナ)前にもこの番組でテーマに上がりましたが、犬猫の死因で腎不全が多いのでしたよね?

(藤﨑)そうです。我々の調べでは猫の死因のトップが腎不全、犬のトップは腫瘍ですが腎不全も上位にあがります。人では人工透析や腎移植が可能ですが、犬猫では現実的ではありません。日本の血液透析患者は既に20万人を超え、さらに年間1万人のペースで増えているといわれています。

(戸高アナ)では犬猫が腎不全になった時、どのようなことに注意したらいいのでしょうか?

(藤﨑)基本的には人と同じように十分な水分摂取や腎臓に負担のかからない食事が重要です。人の食事療法でも塩分制限、リンやカリウムの制限、それにタンパク質の制限が必要です。犬猫では血液透析が出来ないことから、食事療法が特に重要となります。塩分は若齢で健康な個体の10分の1に制限し、リンやカリウムも制限されます。

(戸高アナ)そもそも腎臓病で腎臓の機能が低下したとき、どうして食餌の制限が重要なのでしょうか?

(藤﨑)いい質問ですね…摂取した食事は腸で分解吸収され、一部は代謝され老廃物として腎臓から排泄されます。過剰な塩分やリンも主に腎臓から排泄されます。腎臓の基本的な構造と機能は、糸球体というところで血液から様々な成分が濾過され、尿細管で水分やブドウ糖などが再吸収されます。腎臓の機能が低下し慢性化して腎不全に進展するということは、一般にはその糸球体1個1個の濾過率が低下するということになります。老廃物や過剰な成分を排泄するには、濾過機能が低下した1個1個の糸球体を、車が坂道を上がるときエンジンを吹かすように残存の濾過力に無理させて濾過量を増やさなくてはなりません。

(戸高アナ)よくわかりました。さて、もとの今日のテーマに戻りますが、食事制限で犬猫とヒトとで違うところはあるのでしょうか?

(藤﨑)タンパク質制限の程度が異なります。体重あたりの1日の蛋白摂取量は人では0.6g/㎏とかなりの量を制限するのですが、犬では体重2.0~2.5g/㎏、猫では3~3.5g/㎏を必要とします。人の低タンパク食に対して犬猫の中程度の制限は適タンパク食といいます。これは最低量でこれを下回ると痩せてくるということです。種類によってなぜ違うかということをはじめ、まだまだ解明されていない点が多々あるのですが、犬猫でもこのような食餌療法を実施することで人以上に腎不全など進行進展を随分と阻止できると考えられています。

(戸高アナ)透析が出来ない分、食事療法が重要であることが分かりました。

(藤﨑)ご存知の方も多いかと思いますが、江戸時代に貝原益軒という儒学者がいましたが、彼は周りの長生きしている人を見て、いかに食生活が大切かを察知しました。死ぬ原因は、遺伝が2割で8割が食生活にあることを見抜いていました。「腹八分目」の教えに由来しているそうです。腎不全食は味が薄いし、旨みも抑えられた味気ないものですが、飽きてもなんとか我慢して与えて下さい。

文責:獣医師 藤﨑 由香

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