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9月19日(金)のMRTラジオ「ドクター・ヒデのワンニャン譚」は「猫の運動能力」でした。

(藤崎):今日は猫の運動能力についてお話します。

(戸高アナ):猫は高いところに飛び乗ったり飛び降りたり運動神経抜群ですよね。 

(藤崎):ご存知のとおり猫の体は柔軟でジャンプ力もあります。猫の筋肉、腱、関節、靭帯は非常に可動性に富んでいます。とりわけ肩の関節は可動性が高いことで知られています。ヒトでは鎖骨によって肩と腕がしっかりつながっていますが、猫では鎖骨が小さく退化し、かわりに強力な筋肉で繋がれています。また、小さな鎖骨は高い所から飛び降りた時に衝撃を吸収して和らげる意味もあります。また筋肉もヒトやイヌなど他の動物に比べて軟らかく、筋肉と骨を繋ぐ靭帯も弾力性があります。猫は体中あちこちを舐めることができますがこれらの理由からです。

(戸高アナ):猫たちは足も速いですよね。

(藤崎):猫たちの瞬発力は時速約50キロとも言われます。しかし持続力はなく、この猛スピードを時速できるのはわずかと言われています。

(戸高アナ):猫たちは木登りも上手ですよね??

(藤崎):そうですね。猫の爪はとても鋭く、湾曲しています。また引っ込めたり出したりできるため、通常は引っ込めていて、歩行に邪魔になったり歩くときに爪の音がするということはありません。必要に応じて爪を出し、獲物を捕まえるために使ったり、なわばり争いに使ったり、この爪を使って木登りも上手にできます。

(戸高アナ):なるほど、爪が出たり入ったり自由自在なのですね。

(藤崎):また猫は地面に背を向けた状態で落下しても瞬時に体勢を立て直し着地すると言われます。立て直す距離はたったの60㎝、体勢を立て直すのにかかる時間はわずか0.125-0.5秒。これは『立位反射』といわれますが、発達した前庭器官の働きによるものです。

(戸高アナ):前庭といのはどういう働きがあるのですか?

(藤崎):耳の奥にある器官ですが、重力と直線加速度を司る感覚器官です。つまり体がどれほどの速さでどの方向に向かっているか、体がどのくらい傾いているのかを感じている器官です。前庭で感じとられた情報は反射中枢に伝達されます。反射中枢からは瞬時のうちに頭の位置を元に戻し、着地点を凝視しながら安全に落下するように指令が出ているのでしょう。

(戸高アナ):それで猫は高いところから落ちても案外平気なんですね。

(藤崎):興味深い話を見つけたので紹介します。猫がマンションから落下した際ダメージが少ないのは2階、6階、9階どの順番だと思いますか?

(戸高アナ):普通に考えると2階→6階→9階の順と思いますが…

(藤崎):普通はそう思いますよね。しかし実際は2階→9階→6階だそうです。猫には高層ビル症候群フライングキャットシンドロームという不思議な現象が見られます。中途半端な高さは死傷をまぬがれないが、高層階からの落下は意外にも軽傷または無傷という傾向が見られます。通常高さが増せば落下速度も増すため危険度が増します。しかし、落下するまでの時間がある程度以上になるとからだをリラックスさせ、ムササビのように四肢をひろげて落下することができるそうです。空気抵抗を高め、それによって落下速度を減少させます。

(戸高アナ):なるほど。だから6階よりも9階の方がダメージが少ないのですね。

藤崎:そうなんです。そのため1-2階ほどの短い距離を落下する時には立位反射によって立て直し足から落下します。この際衝撃を吸収するためほとんど怪我をすることがありません。しかし中程度の高さは、立位反射で体勢を整えても落下速度が速いため、着地の際に深刻なダメージを避けられず重傷を負うことが多いというわけです。あるデータでは5階からの落下速度は時速97キロに達するともいわれています。また別のデータで最高記録として軽飛行機の車輪から335m落下して無事だった記録があるようです。

(戸高アナ):ベランダからの落下など十分気を付けてもらいたいですね。

(藤崎):最近の飼い猫は家の2階から落下し骨折するケースもあります。家庭で飼われるようになり野性味が減って、本能が退化しているのでしょうか。くれぐれも落下事故には注意してください。

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