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2015年7月10日(金)のMRTラジオ「ドクター・ヒデのワンニャン譚」は「体重管理」でした。

(藤﨑):今日は犬猫の体重管理についてお話します。

(戸高アナ):うちの子も最近体重が少し増えてきているので気をつけているところではありますが… 人もメタボが話題になりますが犬猫も同じですね?

(藤﨑):平成25年の人の肥満のデータでは人の肥満の指標の1つであるBMIというものを用いた調査で男性の約28%、女性の約20%が肥満という結果があります。また特に肥満の多い40代男性では約34%が肥満というほど肥満の割合は高くなっています。

(戸高アナ):34%というと3人に1人ということで、かなり多いのではないでしょうか…

(藤﨑):日本の犬猫も3頭に1頭が肥満または太り気味といわれるくらい肥満傾向の犬猫は多いのですが、90%のオーナーは問題視していないというアンケート結果があります。これは肥満によって起こる健康被害に関して知識がないということでもあると考えられます。どうしても飼い主さんが仕事でいない日中は家の中で過ごし、散歩も毎日十分量はなかなか難しいですよね。

(戸高アナ):肥満だとは分かっていてもついつい喜ぶからと言って食べ物を与えたくなりますよね。でもそれが逆に健康を害してしまうということですよね。

(藤﨑):そうなんです。適正な体重管理というのは飼い主さんだけができる病気の予防になります。また、太っている子で多いのが食事の量は適切でも間食、おやつをあげ過ぎているケースです。一日の摂取カロリー合計で考えなくてはいけないので、おやつをあげるとその分食事は減らさないといけないし、ちょっとだけと思って与えるおやつでも体格の小さな犬猫では過剰になり過ぎる傾向があります。

(戸高アナ):ではどの程度からが肥満になるのでしょうか?

(藤﨑):肥満とは過剰な脂肪が体に蓄積して理想的な体重を15~20%以上超えることというように定義されています。よく『うちのこの体型はどうですか?太りすぎですか?痩せていますか?』というような質問を受けますが、自分の愛犬・愛猫が太っているのか痩せているのか案外分かりにくいようです。特に毎日接しているオーナーは体重の変化に気付きにくく、人に言われて気付くということも多いようです。また、『この犬種なら何キロがちょうどいい?』というように聞かれることもよくあります。確かにケンネルクラブで標準体重が定められてはいますが、実際はその子の体格によって決まるため、例えばチワワだったら何キロというように決まっているわけではありません。

(戸高アナ):では獣医師はどうやって判断しているのでしょうか?

(藤﨑):一般的に使われている指標にボディコンディションスコア(BCS)というものがあります。5段階評価とさらに詳しく分けた10段階評価とありますが、どちらも評価基準は同じです。今回は5段階評価を用いて説明します。

(戸高アナ):5段階評価ということは3が適正ということですか?

(藤﨑):はい。BCS1,2は痩せすぎBSC3は適正体重、BCS4,5は肥満ということになります。BCS1はかなり痩せすぎの状態で犬猫を見ただけで肋骨、背骨、骨盤が分かるほど浮き上がった状態で触れても脂肪が分からないくらい痩せている状態を表しています。BCS2は多少の脂肪はあるものの、腰のくびれが顕著な状態。BCS3は上から見たとき腰のくびれが明らかで、触診では肋骨は余分な脂肪に覆われることがなく容易に触れる状態でこの体型が適切とされています。BCS4は腰のくびれがはっきりせず、肋骨は余分な脂肪で覆われているがなんとか触れる状態、BCS5は腹部が明らかに丸みを帯びていて腰のくびれは全くない、肋骨は触れず首および四肢に余分な脂肪が蓄積している状態を言います。判断するときは軽く触れてみて肋骨が触れるかどうかですよ。

(戸高アナ):この方法だと家庭でも分かりますね。肥満の原因は食べ過ぎということですよね?

(藤﨑):太るかどうかは摂取カロリーと消費カロリーのバランスで決まるので、食べ過ぎはもちろん肥満の原因になります。肥満には脂肪細胞が増える細胞増殖性肥満と数は増えずに細胞が大きくなる細胞肥大型肥満があります。成長期の肥満は細胞増殖性肥満となり、一度増えた脂肪細胞の数は減らないため痩せにくい体質となります。避妊去勢手術後はホルモンバランスが変化し食欲が増しますが、代謝率は落ち消費カロリーは低下するため同じ量の食事を与えていると太ってしまいます。まれに甲状腺機能低下症で代謝が落ちたり、副腎皮質機能低下症で腹囲膨満が認められるなど内分泌疾患が原因という場合もあります。

(戸高アナ):太っているとどんな病気のリスクになりますか?

(藤﨑):犬と猫で関節炎や糖尿病、犬では心臓病、猫では下部尿路疾患(膀胱炎や尿石症)のリスクが適正体重動物と比較して肥満動物では高くなるという研究データがあります。

(戸高アナ):適正体重になるようにダイエットが必要ということになりますが、犬猫ではどうしたらいいのでしょうか?

(藤﨑):犬猫では運動によって痩せるというのは難しいため、食事管理ということになります。まずは与えている食事の量が適切かどうか測ってみる必要があります。フードによって同じ量を与えていても摂取カロリーは異なります。必ずペットフードの裏には100gあたりのカロリーが書いてあるので計算してみてください。痩せるには摂取カロリーを減らすことが必要になりますが、カロリーを抑えた減量用のフードも開発されています。減量用のフードも与えすぎると摂取カロリーが増えてしまうため意味がなくなってしまいますが、少ない量でも満腹感が得られ継続することができるようにと食物繊維を増量していたり、カロリーは抑えても必要なタンパクやビタミンなど不足しないように工夫されているのでかかりつけの動物病院で相談してみてください。

文責:獣医師 藤﨑 由香

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