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2015年10月2日(金)のMRTラジオ「ドクター・ヒデのワンニャン譚」は「あなたの犬猫が癌になったら…前編」でした。

(藤﨑):今日はあなたの犬猫ががんになったら…というテーマでお話させていただきます。

(戸高アナ):犬猫も人と同じようにがんになるのですね…

(藤﨑):犬猫の寿命が延びてきていることや獣医療が発達してきていることもありがんと診断されることも増えてきています。がんというとどうしても暗く不安なイメージがあり、絶望感に襲われるかもしれません。またどうしても動物の場合には早期発見が難しいので発見時にはある程度進行してしまっているケースが多いのが現状です。日頃の観察や触れ合いで早期発見につながるケースもありますし、健康診断で発見される場合もあります。

(戸高アナ):がんとなると手の施しようがないのですか?

(藤﨑):一言でがんと言いますが種類もたくさんありますし、身体のどの部分にできているのかによっても治療法が異なります。また難しい話になりますが、いわゆるがんというとよく悪性腫瘍といった意味合いでがんといいますが、厳密には上皮系の腫瘍を~癌(例えば扁平上皮癌、移行上皮癌)と呼んでいます。そのため他にも~肉腫とよばれる間葉系細胞の腫瘍(例えば血管肉腫、骨肉腫)や、リンパ腫や白血病など血液の腫瘍も悪性腫瘍になります。

(戸高アナ):なるほど、病名に~癌とついていなくても悪性腫瘍、ガンのことがあるというわけですね。治療はやっぱり手術ですか?

(藤﨑):まずはどの部位にどの種類の腫瘍ができているのかを知ることが大事になります。前回お話しましたCTやMRI等の画像検査を含めて検査を行い、どの部位にどの程度拡がっているのか、他の臓器や血管を巻き込んでいないのかを調べることで外科手術が可能かどうかを判断します。手術する際にはマージンと呼ばれる腫瘍周辺の正常な組織を含めて切除します。そのため腫瘍自体はすごく小さなものでもその周囲を切り取らなくてはなりません。

(戸高アナ):身体の外側にできると比較的早く気付くことができますが、お腹の中だとなかなか気付きませんよね…

(藤﨑):そうなんです。なかなか特徴的な症状があるわけではないので動物の場合には腫瘍を見つけるのが遅くなってしまいます。早期発見が難しいため残念ながら腫瘍と診断されたときにはすでに肺に転移してしまっていたなんてケースもあります。

(戸高アナ):人だと放射線治療もありますよね?犬猫ではどうでしょうか?

(藤﨑):犬猫でも放射線治療を行うことはできます。例えば犬猫では鼻の腫瘍が人に比べて多く見られますが、鼻は眼とも近いですし、鼻の奥には脳があるため手術適用にならないケースがあります。このような場合には放射線治療が選択されます。腫瘍の種類によって放射線治療が有効な腫瘍とあまり意味のない腫瘍があります。

(戸高アナ):放射線治療はどのように行われるのですか?

(藤﨑):放射線治療は数週間にわたり複数回実施されます。1回あたりの放射線治療の時間は数分で外から放射線を当てるだけなので特別な痛みはありません。しかし動物で毎回問題になるのが、麻酔が必要ということです。放射線は周りの正常な組織にも傷害を与えてしまうためピンポイントで当てる必要があります。またピンポイントで当てていてもまわりの組織に影響が現れることがあります。よく見られるのが脱毛、皮膚の色素沈着、皮膚炎、眼の近くに当てた場合には治療終了後に放射線の副作用として白内障になることがあります。

(戸高アナ):なるほど…どの治療法にもありますがメリット、デメリットそれぞれあるわけですね。

(藤﨑):そして放射線治療はまだ動物ではなかなか普及しておらず実施できる施設が少ないという問題点もあります。一番近いところで山口大学にある動物医療センターに設備がありますが、放射線治療は一度で終了するわけではなく週に1、2回を数週間かけて実施するため現実的に通院して治療するというのは難しいですね… 化学療法については次週詳しくお話させていただきます。

(戸高アナ):うちの子も中年齢になりガンを含めて今後病気になるかもしれないことを考えないと…とは思いながらも、まだ元気なのでついつい大丈夫と勝手に考えてしまいがちですが、知識をもっておくということは大事ですよね。

(藤﨑):そうですね、犬猫にはいつまでも元気で長生きしてもらいたいと思いますよね。我が子のように可愛がっている犬猫はどうしてもいつまでも若いつもりで考えてしまいますが、確実に年をとりいずれ自分の年齢を追い抜いていきます。ガンと診断されるのは突然なことが多いですし、自分の犬猫がガンと言われると混乱してしまいます。ガンの種類によっても悪性度や予後は異なりますが、積極的な治療はせずに残りの余生を過ごすという選択肢ももちろんあります。あなたの犬猫ががんになったらどうしますか?まだうちの子は元気という方もこれをきっかけに一度考えてみてください。

文責:獣医師 藤﨑 由香

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