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2015年10月16日(金)のMRTラジオ「ドクター・ヒデのワンニャン譚」は「猫の尿管結石」でした。

(藤﨑):今日は尿管結石の新たな治療法についてお話します。

(戸高アナ):尿管結石、人でも痛いと聞きますよね。

(藤﨑):そうみたいですね。尿管は腎臓で作られたおしっこが膀胱まで通る通り道のことをいうため左右2つあります。片方が正常な場合にはおしっこは作られるため特徴的な症状がなく、食欲不振や嘔吐、排尿時に痛み、血尿、頻尿、腹痛などの症状が認められます。この20年で特に猫の尿管結石は急増していて、結石には種類がありますがそのなかでもシュウ酸カルシウムという種類の石ができることが多くなっていて70~90%にものぼると言われます。尿管や膀胱など結石を認めた猫のうちシュウ酸カルシウムは1980年代にはわずか8%だったのに対して、2002年には56%、一方シュウ酸カルシウムに並んで多いとされるのがストラバイトでしたが1980年代92%だったのが41%に減少しています。これはストラバイト対策のフードが販売されていることの影響と言われます。

(戸高アナ):ストラバイトとシュウ酸カルシウム、これらは何が違うのですか?

(藤﨑):結石の成分が異なります。ストラバイトは尿のpHがアルカリ性の場合にできやすく、シュウ酸カルシウムは逆に酸性の場合にできやすいとされます。ストラバイトは尿のpHによって溶ける可能性がありますが、シュウ酸カルシウムは一度できてしまうと溶ける可能性はありません。

(戸高アナ):溶けないとなるとどうしたらいいのでしょうか…?

(藤﨑):人だとまず第一にたくさん点滴をして尿管から石が流れるのを待つようです。また人では尿環境や超音波破砕という方法があります。しかし、猫の正常な尿管の太さは約1mmとかなり細いためこれらの治療はできません。

(戸高アナ):ではどうしたらいいのでしょうか?

(藤﨑):人と同じように内科療法、つまり点滴をして流れるのを待つというやり方をした場合には閉塞解除成功率が8~17%、死亡率が33~34%。両側の尿管閉塞の場合にはすぐに閉塞解除しなければ致死的です。

(戸高アナ):死亡率も高いのに特徴的な症状がないというのが怖いですね。

(藤﨑):外科手術の場合には尿管を切って結石を取り出す尿管切開や尿管切除、あるいは腎臓摘出などの手術を行います。しかし先ほどもありましたが尿管は約1mmとかなり細いため合併症も多く、尿が漏れたり、述部が狭窄したり、再度閉塞が再発するなどリスクがあるのが現状です。

(戸高アナ):体も小さい分尿管も細いのですね。それを切ってまた縫い合わせるとなると難しそうですね。

(藤﨑):新たな方法として尿管ステントという方法があります。ステントと呼ばれる管を尿管の中に通して、おしっこの通り道を確保するという方法です。この方法の場合には腎臓からあるいは膀胱からステントと呼ばれる管を通し、閉塞部も管の中を尿が通過できるようにするため、尿管を切らずに済み、術後の合併症を減らすことができるとされています。狭窄部にステントを挿入できない場合には、尿管切開をせざるを得ないのですがその場合でも中にステントが通っているため完全に閉塞して尿が通らないという状態は避けられるという方法です。

(戸高アナ):なるほど、ではそのステントは入れたままにしておくということですよね?

(藤﨑):人では約半年ごとに内視鏡を使って交換するようですが、動物では全身麻酔で開腹手術をしなければならないため特に不具合が起きなければ交換しません。ステントの合併症としてはステントが刺激となり血尿や頻尿といった症状が認められることがあります。

(戸高アナ):すべて問題なく解決するというわけにはいかないようですが、でも選択肢が広がるというのは獣医学が進歩しているということですよね。

(藤﨑):他にも腎臓と膀胱を、尿管を通らずにつなぐ器具もでき、検討されているので今後普及するかもしれないですね。

(戸高アナ):治療法は分かりましたが尿管結石を予防することはできますか?

(藤﨑):予防用の食事を与えていても尿管結石は再発することが多いため、完全に予防することはできませんが、予防用の処方食を与えたり、濃いおしっこが結石になりやすいため水分摂取量を増やすために食事をドライからウェットタイプに変更することなどがあります。

文責:獣医師 藤﨑 由香

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