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2016年1月15日(金)のMRTラジオ「ドクター・ヒデのワンニャン譚」は「犬の外耳炎と治療薬について」でした。

(福留):今回は、お耳の炎症、中でも犬で多い外耳炎とその治療薬についてお話します。戸高さんは、外耳炎という病気は御存知ですか?

(戸高アナ):耳がくさーくなったり、赤くなったりする病気ですかね?

(福留):その通りです。外耳炎は、外耳道に細菌や真菌が増えて炎症が起こる病気です。外耳炎になると耳から悪臭を放ち、耳垢が多く出たり、耳を頻繁に掻いたり、頭をよく振ったり、痛がったりというような症状がでます。耳を掻くことで炎症はさらにひどくなり、耳介が赤く腫れ上がったり、耳血腫になってしまう例もあります。

(戸高アナ):外耳炎の原因としてはどのようなものがあるんですか?

(福留):外耳炎の主な原因は、耳の中を細菌や真菌が増殖しやすい環境(いわゆる湿気の多い環境)にしてしまうことです。たとえば、シャンプーの時に耳の中に水が入ったり、耳毛が多いことで空気の通り道を塞いでしまうことにより湿気は溜まりやすくなります。また耳毛は湿気だけでなく物理的な刺激を誘発するため、掻いて耳を傷つけてしまいます。耳の垂れた犬種や、耳毛の多い犬種(トイプードルやマルチーズなど)は要注意ですね。

(戸高アナ):そのままに放置しておくとどうなるのですか?

(福留):外耳炎はある程度ひどくなると放っておいても治ることはありません。ひどく耳を痒がることで食欲がなくなったりと生活の質が落ちてしまいます。稀ではありますが、鼓膜が破れてしまったり、中耳や内耳に炎症が広がることで平衡感覚が失われてしまう末梢性の前庭障害が生じたり、神経を障害してホルネル症候群といわれるものに繋がる可能性もあります。

(戸高アナ):そのうち治るだろうと放っておくのは危険なんですね。痒がる姿をみると早く治療してあげたいものですが、治療法としてはどういったものがあるのでしょうか?

(福留):治療法は耳の洗浄に限ります。また耳毛の多い子は、同時に耳毛の除去も行います。いくらお金をかけて他の治療をしたとしても良くはなりません。

(戸高アナ):耳の洗浄とはどのようにするのですか?

(福留):一般的には、生理食塩水や専用の洗浄液で外耳道をマッサージしながら耳道の汚れを洗浄し、洗浄した後は抗生剤や抗真菌剤の点耳薬をいれます。これを耳が良くなるまで1日2回、少なくとも1日1回は続ける必要があります。

(戸高アナ):耳の洗浄といっても大人しくしてくれる子は簡単でしょうけど、じっとさせてくれない子も多いですよね。

(福留):そうですね。また、飼い主が耳洗浄に時間を割くことが難しいという場合もあります。そのような時のために最近になって新たな外耳炎薬ができました。

(戸高アナ):どういったお薬なのですか?

(福留):チューブに入ってるジェル状のお薬なのですが、抗菌・抗カビ・抗炎症の作用があり、これを病院で耳洗浄を行った後に耳の中へ入れます。その後は1週間後に病院でまた同じお薬をいれることで外耳炎薬の効果が約1ヶ月間持続するというものです。お家での手入れはまったく必要ありません。

(戸高アナ):本来なら毎日耳洗浄するところが、たったの2回病院に行くだけでいいんですか?

(福留):実際に2回しか耳洗浄をしないのですから、本当に効くのかな?と思いますよね。そこでこのお薬を隔週1回ずつ計2回投与した群と、1日2回7日間毎日耳洗浄を行った群での比較実験があるのですが、治療開始後1ヶ月で両群ともに同等の効果が得られたというデータがあり、このお薬の効果は証明されています。ただし、2回の投与だけでは効果が不十分な場合もあり、その時は1ヵ月後にまたお薬を追加することができます。実際にこのお薬を使っていますが、比較的良好な結果を得ています。

(戸高アナ):これなら飼い主としては負担が少ないですし、耳洗浄を嫌がる子にとってもストレスが少なくてすみますね。

(福留):そうですね。ただ、外耳炎になる前に日頃からしつけを兼ねた定期的な耳洗浄を行うことや、耳毛の多い子に対しては耳毛抜きを心がけることが大切かと思います。

文責:獣医師 福留 希慧

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