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2016年3月4日(金)のMRTラジオ「ドクター・ヒデのワンニャン譚」は「胃拡張捻転症候群」でした。

(藤﨑):基本的な病気をおさらいしようということで今日は「胃拡張捻転症候群」についてお話します。大型犬を飼っている家庭では必ず聞いたことがある病気だと思いますが、胃が拡張、変位することによって起こる疾患で、適切な処置がなされないと短期間で死亡することがあります。

(戸高アナ):大型犬に多いのですか?

(藤﨑):一般的にグレートデンやジャーマンシェパードなど胸が深い大型犬で多く認められる病気とされていますが、小型犬での発症もしばしばみられます。多くの場合が中齢から高齢での発生ですが若齢でも発症することはあります。

(戸高アナ):どうして起こるのでしょうか?

(藤﨑):胃拡張が起こったり、胃が捻れてしまうことが原因ですが、なぜ胃が捻れてしまうのかに関してはまだ明らかにされていません。一度に多量に食事をしたり、食事直後の運動することが関連しているとされており、胸の深い犬種を飼育している飼い主さんには注意を呼びかけています。しかし気を付けていても起こってしまったという場合もあります。胃が捻れてしまうと胃の内容物は腸へ流れることも吐き出すこともできなくなります。胃の中では細菌が食物を分解してガスを産生します。出入り口を塞がれた状態でガスが増えるため胃はどんどん大きくなります。その際に周囲の臓器や血管を巻き込んだり圧迫してしまいます。

(戸高アナ):どういった症状のときにこの病気の可能性がありますか?

(藤﨑):急激にお腹が膨れてきてぐったりすることで気付くことが多いです。背中を丸める姿勢をしたり、よだれが出て、吐きそうな仕草をしますが嘔吐物はほとんど出てきません。時間が経過すると拡張した胃が他の臓器や血管を圧迫することで血圧低下、呼吸促迫、ショック症状を示します。

(戸高アナ):どうやって診断しているのでしょうか?

(藤﨑):大型犬でお腹が膨れてきて、吐き気があるけれども何も出ないといった話を聞くと獣医師はまずこの「胃拡張捻転症候群」を疑います。診断は簡単でレントゲン検査を実施するとパンパンに拡張した胃を確認することができます。

(戸高アナ):では治療はどうするのですか?

(藤﨑):早急に胃の中に溜まった液体やガスを抜いて胃を小さくする必要があります。全身麻酔下で口から胃までチューブを入れて胃内を洗浄します。しかし捻じれによってはチューブを挿入することができない場合もあり、そのときはお腹の外から胃に針を刺して中に溜まったものを抜く処置をします。

(戸高アナ):処置ができたら大丈夫ですか?

(藤﨑):十分な処置をしても報告によると死亡率は15~28%とされており、捻れている時間や胃・脾臓の損傷具合によっても予後は変わります。長時間捻れて血流が途絶えると胃が壊死している場合もあります。また、チューブを入れて洗浄したり、針を刺してガスを抜いても捻れが解消できない場合やまたすぐに再発してしまうような症例もいて、そのような場合には開腹手術による胃の整復と捻転を防止するために胃固定を実施しないといけない症例もいます。処置がうまくいき血流が再開すると、血流が途絶えていた間にできた毒素が一気に全身に流れるためにかえって再還流障害と言われるショック症状を引き起こす場合もあります。

(戸高アナ):予防するためには食後の運動を控えたらいいのでしょうか?

(藤﨑):食事を小分けにして、一度に多量の食事を与えることを控える、水も同様に一気飲みをさけることが必要になります。同時に食事中や食後の運動を控えることが大事です。特に多頭飼育での食事は注意してください。しかし、それらを注意していても起こってしまうことがあります。急にお腹が膨らんでくる、ぐったりなるなど異常をみつけた場合にはすぐにお近くの動物病院へ連絡してください!
日頃の生活で予防にもなりますし、異常をいち早く発見するためにも、大型犬を飼っている飼い主さんは絶対に知っておくべき疾患の1つですので、この機会に是非日頃の生活スタイルを見直してください。

文責:獣医師 藤﨑 由香

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